「第三世代」のドゥンガ
元ブラジル代表監督のドゥンガを語るには、彼の歩んできた人生に触れざるをえない――。
ブラジルのサッカー選手を「社会への関与」という観点で分類すると、三つの年代に分けられる。
第一世代は、1970年代半ばまで現役だった選手たちだ。彼らの時代はサッカー選手という職業が確立されていなかったため、糊口を凌ぐので精一杯だった。
第二世代、80年代以降にサッカーは人並み以上の収入を得られる職業となった。選手の教育水準も上がり、引退後にはサッカースクールやチーム経営に乗り出すという形で社会と関わる人間が出て来た。ジーコなどはここに加えられる。
そして第三世代――90年以降、スポーツ及びサッカーが巨大な、そして世界的なビジネスとなった中でプレーした選手たちだ。彼らのほとんどは国外のクラブでプレー経験を持ち、莫大な収入を得た。彼らは現役中から社会貢献に積極的である。
貧民街に施設を作ったジョルジーニョ、貧しい人たちのために財団を作ったレオナルドとライー、タファレル、国会議員となったロマーリオ――94年W杯アメリカ大会の優勝メンバーの多くがチャリティ活動を行っていることは興味深い。
ドゥンガはその代表的な人物でもある。
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