ビオラのコーチからの突然のコンタクト
今さらながら、やはり現場に生きる者達の話にこそ真に面白いネタは転がっているものだと実感する。という出来事に、とは言えそれほど珍しい話ではないのだけれども、つい最近に出会すことがあった。
フィオレンティーナを取材していた際、何気に話していたクラブ関係者が葉巻を吹かしながらこう切り出したのである。
「そう言えば…ついこの間のことなんだが、ウチのコーチがお前と話がしたいって言ったんだよな。理由は何だか知らないんだが」
聞けば、現フィオレンティーナの監督(ビンチェンツォ・モンテッラ)を補佐するスタッフの一人が筆者コンタクトを求めているという。なので「OK、こっちはいつでもいいっすよ」。そう返事をすると翌日、当のコーチ氏から電話が掛かってきた。実に気さくな口ぶり。
受話器を取って1分も立たぬうちにもうまるで旧知の仲であるかのような気になるのはここイタリアではそう珍しい話ではないのだが、それにしても、面識など一切ない相手に、しかも外国人にこうもフレンドリーに話せるってことはやっぱいいもんだなぁ、と、余談ながらもそう強く思いながら話に耳を傾けていた。もっとも、こちらの都合などは何ら気にすることなく早朝6時に掛けてくるのにはやや閉口したのだが……。
ともあれ、先の9月末、フィレンツェ中心部にある市場の角で落ち合い、強烈に濃いエスプレッソを呑み、そのまま昼食を挟んで約4時間強、じっくりと話をすることになった。
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