現実を受け入れ、何が出来るのかを考える
内田篤人が海外のクラブで成功をおさめることが出来たのは、日本とは違う環境であることを当たり前のこととして受け入れたからだろう。
その現実を受け入れた上で、自らに何が出来るのかを考えていく。そこには、海外だから思うようにいかないという苛立ちも存在しなければ、戸惑いもない。問題が生じれば、それが海外でプレーするということなのだと考え、問題が生じたことを嘆くことなく、問題を解決することに全力を注ぐ。日本人選手の中には問題を解決する前の段階で、思考がストップしてしまう者も少なくないのだが、内田にはそんな無駄な時間がないのである。
海外でプレーする上で最初に直面するのは、言葉の違いである。
ブンデスリーガの場合、基本的にはドイツ語でコミュニケーションがとられる。内田が所属するシャルケは、在籍する25名中15名をドイツ国外の選手が占めており、英語が使われることも多いのだが、いずれにせよ日本人から見れば外国語であることに変わりはない。言葉ができなければ、日本でプレーしていたころのようにコミュニケーションをとることは不可能だ。
どんな手段を使っても思いを伝える
そうした状況を嘆いたり、悩んだりしてしまう選手もいるだろう。しかし、内田の場合は言葉が思うように伝わらないことは、トランプにおけるルールのようなものだと認識していて、そこからいかにして進んでいけば良いのかを考えるのである。
まず、内田の特徴として第一に挙げられるのは、伝えなければならないことは、どのような手段を使ってでも伝えるということ。
彼のポジションはサイドバック。つまり、ディフェンスである。そのプレーいかんでは失点に直結してしまうポジションだ。そして、ディフェンスであるからこそ、個人の力ではなく、チームとして連係をとらなければいけない場面がある。加入当初の内田は、そんなチームとしての守備の約束事について、疑問を抱くことがあった。しかしながら、言葉は全くと言っていいほど通じない。内田が用意したのは、一冊のまっさらなノートだった。