構想外から主力となった長谷部
ウインターブレイク前のラストゲームとなったブンデスリーガ17節。
ボルフスブルクがホーム、フォルクスワーゲン・アレーナにフランクフルトを迎えた一戦では、長谷部誠と乾貴士の日本人対決が実現した。
今シーズン、不振に喘いでいたボルフスブルクがフェリックス・マガト監督を解任したのは、今からひと月半前の10月25日のことだった。
独善的だった前指揮官によって、“構想外”とされていた長谷部の立場は、その日以来一変した。
暫定監督として後を引き継いだローレンツ・ギュンター・ケストナーは、Bチームの指導をしていた人物である。彼から信頼されていた長谷部は2日後の9節、デュッセルドルフ戦でスタメンに指名され、今シーズン初めてピッチに立つと、このフランクフルト戦を含め9試合続けて先発出場を飾っている。
もっとも、劇的に変化した長谷部の境遇とは裏腹に、チームは復調の兆しを見せながらも、なかなか波に乗り切れない。
11月11日のレバークーゼン戦と11月18日のホッフェンハイム戦で2連勝を飾ったが、その後は2分1敗の成績で、勝利から3試合遠ざかってしまう。こうして迎えた前節、王者ドルトムントとの大一番は、3-2で接戦をモノにした。後半戦で巻き返すためにも、ホームで迎えるフランクフルト戦は、なんとしても勝ちたいゲームだった。
ハイスピードな攻撃陣を支える乾
一方、フランクフルトは、それとはずいぶん対照的だ。昨シーズンに2部で2位となり、1部に返り咲いたばかりだが、開幕6試合で5勝1分とスタートダッシュに成功。ここまで勝点27を挙げ、4位の好成績を収めている。
躍進の原動力になっているのは、守から攻へのトランジションの速さと、そこから繰り出される鋭い攻撃で、トップ下のアレクサンダー・マイヤーとともに好調な攻撃陣を支えているのが、左サイドハーフの乾だ。ここまで4得点をマークしている乾は、ボルフスブルク戦でもチームに欠かせない選手であることを証明した。
立ち上がりから主導権を握ったのは、アウェーのフランクフルトだった。
サイドハーフの乾とサイドバックのバスティアン・オツィプカが抜群の連係を見せて左サイドを攻略していく。5分には乾が得意のカットインで中央に侵入。いったん左サイドに預けてからリターンをもらい、狙い済ましてフィニッシュ。これはGKディエゴ・ベナーリオにセーブされてしまったが、実に乾らしい、流れるようなプレーだった。
12分にセットプレーから生まれたフランクフルトの先制点も、FKを獲得したのは乾だった。
乾がペナルティリアの左外でファウルを誘発。ピルミン・シュヴェグラーが蹴ったFKにファーサイドでマイヤーが頭で合わせ、今シーズン11点目となるゴールを決めた。
さらに4分後、試合を決定付ける出来事が起きた。