大会前、決して高くはなかった期待
カナダで開催中の女子W杯で連覇を狙うなでしこジャパンが、準々決勝で相見えるのが豪州女子代表。日本とはアジア有数のライバル関係にある男子の「サッカルーズ」とは異なり、女子の「マチルダス」の知名度は日本では決して高くないだろう。
まずは、聞き慣れない「マチルダス」という愛称、その由来には少し長くなるが触れておく必要がある。
マチルダ(Matilda)とは、オージーであれば誰もが知っている国民的愛唱歌で第2の国歌とも位置付けられる“Waltzing Matilda”の歌詞の中で、ブッシュを放浪する旅行者(swagman)が独りの侘しさを紛らわすために自らの寝袋に付けた女性の名前。
この歌が全豪で愛唱されるようになるにつれ、マチルダという名は最もオージーらしい響きを持つ女性の名前として定着するに至った。
そんな非常に愛国的な愛称を持つマチルダスだが、豪州国内で大きな人気を集めているかと言えば、そうではない。今大会に臨むにあたって、日本でのなでしこジャパンを応援するようなノリの何らかの盛り上がりがあったかというと、残念ながらそれも「NO」と答えざるを得ない。
今大会の豪州は、言わずと知れたアメリカ、ヨーロッパの古豪でFIFAランキング上位のスウェーデン、アフリカ最強のナイジェリアと共にグループリーグ随一の激戦区に入った。難敵がずらりと同組に入ったことも手伝い、大会前には決勝トーナメント進出さえできればという程度の期待値が一般的だったのではないか。
そんなチームが激戦区を2位で勝ち抜け、決勝トーナメント初戦でサッカー王国ブラジルを破る波乱を起こした。そのブラジル戦の後からは、一転して大いに注目が集まった。これからは、あと1日に迫った日豪戦を前にして、また、マチルダスの露出も増えてくるだろう。