「フットボールはリクエストに応えてくれる音楽会なんかじゃない」
望みは叶わなかった。セバスティアン・ケールは「フットボールはリクエストに応えてくれる音楽会なんかじゃない」と言葉を残した。2015年5月30日、ベルリンで行われたDFBポカール決勝でドルトムントはヴォルフスブルクと対戦する。
先制点を奪ったのはドルトムントだった。5分、右サイドでドゥルムが戻したボールを香川がダイレクトでクロスを入れる。オーバメヤンが右足で合わせて蹴り込んだ。1-0。序盤のヴォルフスブルクは動きが固かった。左SBのロドリゲスが残った格好となり、オフサイドを取り損ねてしまう。
ヴォルフスブルクとのポカール決勝は、辞任する監督クロップと引退する前主将ケールにとって、本当の意味で最後の試合だった。
ケールは言う。
「儚い望みにしがみついていたよ。シーズンが終わった後には、ここでもう一度タイトルを獲得することが出来るとね」
オーバメヤンによる幸先の良いゴールの後では、ケールの望みは現実のものとなりそうだった。ベンチから戦況を見つめたクーバ(ブワシュチコフスキ)が「試合の入り方は本当に良かった」と振り返るように、しばらくドルトムントが優位にゲームを進める。
6分にペリシッチのシュートに対してランゲラクが好セーブを見せ、8分には香川のサイドチェンジからシュメルツァーがそのまま左サイドを上がって、中央に折り返す。ここはオーバメヤンには合わない。
ドルトムントはカリジュリとペリシッチの左右のSHに対して、主にシュメルツァーとドゥルムの両SBがしっかりフタをする。ヴォルフスブルクに素早いカウンターを許さなかった。16分、GKベナーリオからのフィードを受けるペリシッチを、フンメルスが潰す。