つまらない「書評」もどきの溢れかえる時代に業を煮やして出版
9月20日に発売された『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』(カンゼン)は、スポーツ関連書批評の第一人者・佐山一郎氏が、『朝日新聞』『週刊朝日』『サッカー批評』『フットボールサミット』など9誌(紙)で営んできた過去11年/全153冊のサッカー本書評の集大成だ。
──サッカー本の書評だけで一冊となるとおそらく出版界でも初めてのことだと思います。この『サッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』を世に問うことになった経緯は?
「体験談と単行本未収録の初出原稿で構成した新型の雑誌論を、2006年の拙著『雑誌的人間』(リトル・モア)でやったことがあるんです。ところが、その後気になってきたんですよ、新刊評の頁がどんどん雑誌から消えていくのを。継続している場合も、大体は巻末の添え物扱いで、尻尾にもなっていない。
この号買おうかな、よそうかなの判断基準は決定打になる玉一つじゃ無理で、二つか三つ、今では『玉四つ以上ないと買わない』とまで言う人がいます。ぼくの場合はこれでも業界生活30年超えしてるでしょ。なので、雑誌を後ろから読んだりすることもあるわけです。
だめ押しは、そもそもが囲碁用語ですけど、2-0じゃ危ない。3-0や4-0にしたいときのだめ押しとして書評欄を再検討すべきじゃないかと考えるようになったんです。あまり言いたくないけれど、編集者が仕事以外の本の話をしなくなってることへの危機感もありました」
──このタイトルに込められた思いは? やはり「夢想する」というところがポイントでしょうか? 自賛めきますが、装丁、挿画もうまくはまっているように思えます。
「タイトルで悩んでいたとき、箱根ラリック美術館の館内を歩いていたら、アールデコ時代の書斎が展示されていたんです。で、たまたまピンと来るタイトルがついていたんですよ。『夢想するブルジョワジーの書斎』か~、これをいただけば、俺もブルジョワジーになれると思わず膝を叩いたんです(笑)。
『夢想』に関しては、テレ朝に顕著なただ騒いでいるだけのテレビ実況の退化に敏感な人なら分かるはずです。それが嫌なら音消すか、サッカー場に出かけるか、引きこもるかしかないわけでね。ぼくの場合は老母の在宅介護を続けていたから、引きこもるしかなかったわけです。
装丁、挿画は、キャリア豊富で付き合いの長いお二人(白石良一、丸山誠司)をこちらから指名させてもらいました。『カンレキ(記念出版)はカンゼンで』──が合言葉でしたから、『要支援・一(郎)』で、もう何でも許されちゃいましたね(笑)」