背番号8の継承者、香川、清武と同じピッチに
7月から9月にかけ、柿谷曜一朗は実に濃密な3ヶ月を過ごした。7月、待望の初の日本代表に選出されると、東アジア杯では鮮烈な3得点を奪って日本を優勝に導いた。そして、本田圭佑、香川真司らと融合した8月9月シリーズ。
合流前、「一緒にやることによって新しい何かが見えるかも知れない」と話していた彼らとのプレーは想像以上の速さでフィット感が生まれ、今年に入って疲弊感も漂っていた日本代表にフレッシュな風を送り込んだ。
所属するC大阪でチームのエースナンバーである背番号8を受け継いだ今季初頭、「俺だけ(日本代表に)入れんかったらどうしよ(笑)」と不安な胸の内を明かしていたが、杞憂に終わった。
東アジア杯の日本代表に選出された7月15日、彼の携帯には祝福の「メールや連絡がいっぱい来た」という。それは、幼少期から現在に至るまで、彼の指導や成長に携わってきた全ての人にとっての喜びであり、「お礼せなアカン人は山ほどいる」と柿谷は苦笑した。
彼ほど、輝きと挫折の振り幅の大きなサッカー選手はいない。海外組が揃った8、9月の代表では、徳島への期限付き移籍前のC大阪で大きな差を付けられた香川や、C大阪に復帰後、チームのエースとして君臨していた清武弘嗣とも日本代表という同じ土俵に立ち、9月10日のガーナ戦では3人揃って先発のピッチに立った。
彼らとの揃い踏みについて、柿谷自身は、「3人一緒に出た試合で勝てて良かった」と語るに留めたが、彼らの辿った軌跡を考えると、実に感慨深い瞬間だった。
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