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Jリーグ 10年前

FC東京・武藤がJリーグで傑出した選手である理由。“心技体”を揃えた、試合を決められる稀有な存在

試合終盤に千両役者が大きな仕事をやってのけた。連戦による疲れもある中で、この日も最後まで走り続けた。FC東京の武藤嘉紀は、なぜ常にハイレベルなプレーを披露できるのだろうか。

text by 青木務 photo by Getty Images

42604人が詰めかけた味スタ

FC東京・武藤がJリーグで傑出した選手である理由。“心技体”を揃えた、試合を決められる稀有な存在
大久保嘉人がJ1通算140点目を決めて“キング越え”を果たした【写真:Getty Images】

 注目の一戦で試合を決めたのは、注目を集める武藤嘉紀だった。自らが粘ってFKを得ると、これ以上ないほどドンピシャのヘッドでゴールネットを揺らした。

 飛田給駅からスタジアムへの道中にある歩道橋。そこには「すべては勝利のために」というバナーが掲げられていた。全員の高い守備意識と鋭いカウンターを中心にしぶとく勝ち点を積み上げているFC東京。勝利への思いはこんなところにも表現されていた。

 毎回、熱戦が繰り広げられる多摩川クラシコ。この日、味の素スタジアムには42604人が詰めかけた。堅守が光るFC東京と、リーグ最高の得点力を誇る川崎フロンターレの一戦には、期待と興奮が渦巻いていた。

 先に仕掛けたのはアウェイの川崎。セットプレーから大久保嘉人がJ1通算140点目を決めて“キング越え”を果たした。

 前半20分にしてビハインドを背負ったFC東京が、このまま押し込まれてもおかしくなかった。実際、川崎は前節に比べてパスワークがスムーズで、大久保と船山貴之のコンビネーションも機能していた。

 それでも後半に入ると少しずつFC東京が勢いを強めていく。ハーフタイムにマッシモ・フィッカデンティ監督から「リスクを冒してでも前に出てボールを奪おう」と指示を受け、前からのプレスを徹底した。急先鋒となったのは武藤だ。相手のボール回しは一級品だが、挫けることなく食らいついていく。また、味方からのボールをキープし、味方が押し上げるための時間を作る。行けるとわかれば迷わず前を向いて仕掛けることも忘れなかった。

 そうした姿勢に相手の対応が少しずつ遅れる。そうして迎えた64分、試合の流れを大きく変える出来事が起きた。武藤のドリブルをファウルで止めた川崎のDF車屋紳太郎が2度目の警告で退場を宣告される。

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