伝統的に染み付いた日本の癖
就任から2試合で連勝を飾り、ホームの親善試合とはいえ幸先の良いスタートを切ったハリルホジッチ監督。何より短い期間でチームの方向性を選手たちに伝え、その成果が早くもピッチに表れているのは彼の意欲と手腕によるところが大きいだろう。
例えばチュニジア戦で本人も予想しなかった先発出場を果たした藤春廣輝は試合で見せた攻守のハードワークや球際の頑張りに関して、ガンバ大阪のチームメートでもあるGKの東口順昭に「ガンバとちゃうやん」と冗談半分で言われ、そうした意識の変化は宇佐美貴史にも感じたという。
ハリルホジッチ監督がここまで一貫して主張している1つに「攻撃の時は全員が攻撃に関わり、守備の時は全員が守備に関わる」がある。そのモットーはいかなる試合でも勝利を目指すという方針とともに、今後も変わることはないだろう。
その一方で、筆者が少し慎重に見ているのは相手DFの背後を狙い、徹底して背後を突く攻撃スタイルだ。日本は伝統的に中盤でボールを細かくつなぐ傾向が強く、2010年に当時の岡田武史監督がW杯仕様でカウンター色を強めたものの、基本的にポゼッションの志向は現在まで受け継がれている。
ひとくちにポゼッションと言っても実際は様々な方法があるわけだが、日本の場合は中盤の同じエリアに複数の選手が固まりボールをつなぎ、それが機能しなくなると“距離感の悪さ”という表現で問題が指摘される。
またアタッキングサードまでボールを運んでも、そこから一気に打開できる可能性が高くないと、ボールを後ろに戻して組み立て直す傾向も強い。