個人のアピールより大事なこと
今季、Jリーグで印象的な得点を重ねるにつれて加熱していった柿谷曜一朗の代表入りを求める声。自身は「もちろん誰もが代表を目指す」と意欲は見せつつも、期待に過剰反応することなく、静観を貫いた。
時に、「みなさん、ハードル上げ過ぎです。周りが『柿谷、柿谷』って言い過ぎて、逆に呼ばれないかも知れないじゃないですか(笑)」と報道陣をたしなめることもあった。ただ、やはり風は彼に吹いていた。
第15節の横浜FM戦。柿谷はザッケローニ監督が視察に訪れた目の前で、南野拓実とのワンツーから華麗に相手ゴールを陥れ、決定力の高さを見せつけた。5日後の7月15日。東アジア杯を戦う日本代表に柿谷は選ばれた。
クラブハウス内にて、C大阪から同時に選ばれた山口螢、扇原貴宏と3人で会見に臨む前、廊下ですれ違った時に握手をすると、柿谷は実に嬉しそうな表情を浮かべていた。この日は終始にこやかで、会見が終わった後も、実に20分近く報道陣の囲み取材に応じた。
途中、「この辺で…」と広報が切り上げかかっても、柿谷自身が「大丈夫やから」と制止し、続けて応じた。これまでは正面切って話すことのなかった日の丸への思いの余すことなく打ち明けたのだ。
その際に強調していたのが、「東アジア杯はチームで優勝を目指す」ということ。“個人のアピールの場”という位置付け以上に、「タイトルを取って、Jリーグ組でもこれだけできる、というところを見せたい」と、大会に臨む意気込みを示していた。
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