社会に蔓延る根深い差別問題
パリ市内の地下鉄の駅で、1度ならず2度までも黒人男性の乗車を妨害し、人種差別を肯定するチャントを口にしていたチェルシーファン数名。2月17日、CLでのパリ・サンジェルマン(PSG)戦第1レグ当日の出来事だった。翌週の3月1日には、チェルシーが優勝を果たしたリーグカップ決勝後に母国の列車内でも人種差別騒動が勃発。ファンと見られる数名が警察に途中下車を命じられた。
クラブの対応は迅速だった。PSG戦の3日後までには、容疑者計5名のホームゲーム観戦禁止を発表。警察の捜査でパリでの事件に関与したと判明すれば、スタンフォード・ブリッジ永久追放に処す意向を明らかにした。カップ戦決勝後の一件に関しても、サポーターと確認されれば同様の対処をすると広報を通じて伝えている。
だが、これは事件の早期解決を意味してはいても、根本的な問題解決を意味するものではない。人種差別はクラブどころかサッカー界に限られた問題ではないからだ。パリで被害にあったフランス人男性は、「差別のある現実を生きているから今さら驚かない」と『ル・パリジャン』紙に語っているが、その現実は英国でも同じ。表面化している大問題ではないが、社会に蔓延る根深い問題だ。
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