私がハリルホジッチを推した理由
私がこのコラムを執筆した当時は10指にも余る候補の名前が浮上し、かなり有力と報じられる監督もいたのだが、筆者がハリルホジッチを推薦したのはフリーの立場の指導者で、ブラジルW杯でのパフォーマンスが最も良かったことと、これまで披露してきたサッカーが、日本に足りない何かをもたらしてくれる可能性を感じていたからだ。
またW杯で実績を残した何人かの有力候補も母国を率いてのもので、異なる地域の異なる文化の代表チームで指導した経験が無い。唯一、ブラジル人のフェリペ・スコラーリはポルトガル代表の監督経験を持っていたが、戦術面で日本が目指してきたものから大きな転換が必要であり、個の力を最大限に活かすスタイルは日本代表にとってスペックオーバーなのは明らかだった。
ハリルホジッチは2010年W杯を目指すコートジボワール代表を率いてアフリカ予選を戦い、6試合19得点という爆発的な攻撃力を発揮させ、失点もグループ最少の4に抑え、本大会への出場を決めた。確かにドログバなど身体能力の高いタレントを擁していたが、目を見張ったのがサイドを起点としながら、チャンスにはゴール前に3、4人が常に殺到する迫力あるフィニッシュを実現していたことだ。
そうしたパフォーマンスもあって、アフリカ勢として初めてW杯を制するのではという声も多く聞かれたが、直後のアフリカネーションズカップ準々決勝で伏兵アルジェリアにまさかの逆転負けを喫し、世界の舞台を前にしてハリルホジッチは解任されてしまった。もともと協会幹部との確執も囁かれていただけに、コートジボワールとしては“いい切り時”だったのかもしれないが、その後スベン・ゴラン・エリクソンに率いられた“エレファンツ”はバランス重視の良くも悪くも、小さくまとまったチームになり下がっていた。