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アジア 10年前

サッカルーズは頂点を極めるか。目指すはアジアでの存在証明たるタイトルのみ

自国開催で大会に臨んだオーストラリアは、悲願のアジアカップ初制覇まであと1勝。グループリーグ第3戦で今大会唯一の黒星を喫した韓国と決勝の地で再びあいまみえる。大会前の下馬評を覆す目覚ましい躍進を遂げたサッカルーズの真価が問われる時が来た。

text by 植松久隆 photo by Getty Images

“ケーヒル依存症”から脱却しつつあるサッカルーズ

サッカルーズは頂点を極めるか。目指すはアジアでの存在証明たるタイトルのみ
サッカルーズは“ケーヒル依存症”から脱却しつつある【写真:Getty Images】

 “Keep Calm and Cross it to Cahill”という横断幕が、ブリスベンで行われた中国との準々決勝のスタンドに掲げられて話題になった。これは2000年代になってリバイバルされ人気を呼んだ第二次世界大戦下の英国で使われた標語“Keep Calm and Carry On(平静を保ち、普段通りに行え)”を基にしたパロディだ。英国文化の影響を未だに受けるここ豪州では、「and」以下を色々と自由に変更したパロディが様々な用途で使われてきた。

 この大会に入る前の豪州であれば、この横断幕のメッセージはより説得力あるものだったに違いない。当時は誰の目に見ても明らかな“ケーヒル依存症”に侵されていたが、それも今や過去の話になりつつある。

 この大会で中国戦での2得点を含む3得点を挙げているティム・ケーヒルは、確かに未だにチームの揺るぎなき絶対的なエースであることは変わらない。しかし、彼以外に9人もの選手が様々なパターンで得点をしている今大会では、彼への依存度は相対的に下がっている。「困ったら放り込んでのケーヒル頼み」というのは、今のサッカルーズの戦い方ではない。

 そんなチームの進化をケーヒル自身も自らの口で語っている。29日にメディアの取材に応えた際、「『ケーヒルに厳しく当たってスペースを与えるな』中国のDFはそればかりに一生懸命だった。でも、それでは90分持たないし、そんなことをしても別の選手に決められるだけ」と複数のDFの密着マークに苦しみながらも、後半に2得点した中国戦を引き合いに出した。これは決勝であいまみえる韓国にとっては非常に良い警告となる。

 韓国守備陣がケーヒルを気にし過ぎると、その他の好調な攻撃陣が自由に動けるスペースを与えてしまう。かといって気にしないわけにもいかない。絶対的なケーヒルの存在感とマシュー・レッキー、ロビー・クルーズの両翼が掻き回す展開。さらには中盤以降の選手にも得点力があるだけに、韓国守備陣はサッカルーズの攻撃への対処に苦慮するだろう。

 大会で唯一の無失点を誇っている鉄壁の韓国守備陣がサッカルーズの猛攻によって破られる――そんなシーンが見られる可能性は高い。

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