「スターを買わない。創るのだ」
この夏、アーセナルが「大型補強に乗り出す」とは専らの噂である。壮麗な新スタジアム「エミレイツ」のこけら落としから7年、その前シーズンからタイトルと名の付く勲章にまったく無縁で来た以上、もはや手をこまねいてはいられない、といったところだろうか。
いつしかイングランド一(ということは、たぶん世界一)高額なチケットを売りさばいてきたクラブならではの「資金の裏付け」、つまり“ゆとり”も察せられる。かくしてCEOアイヴァン・ガズィディスは「予算7000万ポンド以上」の“展望”を公にした。
アーセナルに「何かが起こる」――もし、早々にリヴァプールのルイス・スアレスに提示した「3000万ポンド」が“ブラフ”、もしくは一種の陽動作戦ではないとしたら、その予感はかなり現実味を帯びてくるだろう。
だが、そのためにはどうしても越えなければならない“壁”がある。監督アーセン・ヴェンゲルがこれまで頑なに貫いてきた“気高いポリシー”という壁だ。
「我々(自らが率いるアーセナル)はスターを買わない。創るのだ」という、そのポリシーの下、ヴェンゲルは極力、“出来上がったスター級即戦力”の補強を控えてきた。
それが、いずれもアーセナル入団時は無名同然の存在だったアネルカ、アンリ、ヴィエラ、ファブレガス、ファン・ペルシーら、“レッド&ホワイトの歴史”に燦然と輝くスターを輩出する原動力だった。
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