不言実行の頼れるキャプテン
「キャプテンとして特別なことは何もしていない」
自分の胸の内を軽々しく明かそうとはしない遠藤ではあるが、その言葉が本心ではないことは、プレーを見れば明らかだ。
「ヤットさんが体を張っているのを見れば、チーム全員が頑張ろうという刺激を受ける」。背番号7が泥臭く体を投げ出す姿を、後方で見続けてきた丹羽の言葉はチーム全体の思いと言っても過言ではあるまい。
歴代最多を更新する11回目のベストイレブンと、キャリア初のMVPに選出された遠藤は今季、紛れもない「守備の人」だった。全盛期のようにボール支配とパスでの崩しにさほど重きを置かない今季のスタイルでも、メッセージ性を込めたパスや、必殺のプレースキックは輝きを見せたが、今季の背番号7は守備でも随所に違いを見せた。
宇佐美を欠いた開幕当初は、昨年同様FWなど前線での起用が続いたが、中断明け後はボランチとして今野とともにバイタルエリアに君臨。かつては橋本や明神ら専守防衛のパートナーを脇に従えていたこともあり、攻撃に専念出来た遠藤ではあったが、今季は「ヤットさんと僕は役割を決めていない」と今野は語る。
本能の赴くままに相手の攻撃の芽を摘む今野を絶妙のバランス感覚でサポートしながら、危険地帯で体を張ったり、スペースを埋めるキャプテンは、確実に最終ライン前の「防波堤」だった。
マイペースな背番号7が今季の節目となる試合を前にしばしば、口にしたのは自身がこだわる楽しいサッカーへの未練ではなく「勝ち点3を獲るために全力でハードワークする」というシンプルな一言だ。
そのプレースタイルだけでなく、キャプテンとしての役割もまさに「ヤット流」。不言実行の34歳は、まさに新境地を開いてみせた。
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