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かつては同じ街を拠点とする宿敵ユベントスと苛烈な優勝争いをしていたトリノだが、現在はタイトルとは無縁の日々を送っている。それでも、今季は新指揮官のもと魅力的なサッカーを展開し、ミランとアタランタ相手に勝ち点4を獲得。果たして、パオロ・バノーリとはどのような男なのか。トリノの復権はこの男にかかっている。(文・佐藤徳和)
サポーターの怒りは頂点に「出て行け、投機家!」
「イル・トーロ(トリノの愛称、雄牛の意味)は、情熱と愛だ。クラブを売却し、出て行け、投機家!」「野心はあるのか? 19年間の会長職在位で、いつも変わらない主張ばかりだ」。25日の第2節、アタランタとの試合前、トリノのサポーターたちの怒りの矛先は、クラブのウルバーノ・カイロ会長へと向けられた。スタディオ・オリンピコ・グランデ・トリノからほど近い、フィラデルフィア・トレーニングセンターに、クラブ最大サポーターグループのクルバ・マラトーナが集結。その数は1万5000人から2万人近くまで膨れ上がり、カイロ会長を侮辱するためにあらゆる汚い言葉が発せられ、罵詈雑言の限りを尽くした。
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怒りの発端は、ラウル・ベッラノーバをアタランタへ譲渡したことにある。7月13日には、地元トリノの生まれで、クラブの下部組織出身であったアレッサンドロ・ブオンジョルノをナポリに放出。宿敵ユベントスへの移籍は、本人の意向により回避されたが、将来のバンディエラとなるべき宝を手放し、さらに、ベッラノーバも売却し、サポーターの怒りは頂点に達した。
ところが、サポーターの憤りとは裏腹に、チームは開幕から2試合を終えて、攻撃的で見応えのあるサッカーを展開。昨季のセリエAで2位のミランと4位のアタランタから、勝ち点4をもぎとった。開幕節、7万の観衆を集めた敵地サン・シーロでのミラン戦は、2-2の引き分け。一時は2点のリードを奪ったが、終盤に相手の猛攻に遭い、惜しくも勝ち星は逃したものの勝ち点1を手にし、上々のスタートを切った。