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前編ではマチェイ・スコルジャ前監督が率いた昨季からの文脈で、浦和レッズがペア・マティアス・ヘグモ現監督の下で進めるボール保持のメカニズムをひも解いた。後編では、ロングボールとプレッシングの局面を整理しながら浦和の現在を解き明かしつつ、未来を展望していく。(文:らいかーると)
著者プロフィール:らいかーると
1982年、浦和出身。とあるサッカーチームの監督。サッカー戦術分析ブログ「サッカーの面白い戦術分析を心がけます」主宰。海外サッカー、Jリーグ、日本代表戦など幅広い試合を取り上げ、ユニークな語り口で試合を分析する人気ブロガー。著書に『アナリシス・アイ ~サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます~』『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』がある。
ロングボールの二択。成立させるメカニズム
ビルドアップに対する人を基準とするハイプレッシングの対策として、ロングボールを多用する流れが現代サッカーには訪れている。マンチェスター・シティはアーリング・ハーランドを準備し、レアル・マドリードはジュード・ベリンガムを筆頭とする空中戦の的から、裏に走りまくるブラジル人コンビと多彩なロングボール作戦を実行している。
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ロングボール作戦を平たくまとめると、個でどうにかするか、グループでどうにかするかの二択となる。個でどうにかする筆頭はいなくなってしまったソルバッケンや酒井宏樹の得意技であった。現状の浦和レッズには苦し紛れのハイボールに対して、相手をフィジカルで抑えてマイボールにするプレーを得意とする選手はいない。となると、自動的に「グループで!」という結論になる。そのためには競る人と裏を狙う人とセカンドボールを拾う人が必要になってくる。
現状の浦和はこのハイボールの競り合い、裏への飛び出しがあまり機能していない。おそらくは苦し紛れの状況でのロングボールが多いことで、前線の選手たちがグループ化するタイミングが取れないのだろう。
また、3トップはウイングが大外にいる傾向があるので、ばらばらになることも多い。よって、グループにするときはインサイドハーフ、もしくはトップ下の選手の立ち位置が大事になるのだが、彼らがビルドアップのサポートに駆り出されると、あちらが立てばこちらが立たず状態となる。
相手を押し込んだ状態や、少人数でのビルドアップが可能な場合は、インサイドハーフが飛び出せば、ウイングが下がるなどの連動性を発揮することができている。特に鹿島アントラーズ戦の反撃の狼煙となった武田英寿のゴールは伊藤敦樹の裏への飛び出しがきっかけとなっていた。ロングボールの整理が進めば、ボール保持のリズムとテンポはより複雑になってくのではないだろうか。問題はロングボールで相手にボールを渡したときに取り返せるかどうかになるだろう。