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Jリーグ 10年前

ヴァンフォーレ甲府を退任する城福浩監督を支えた、家族との絆

3季連続でJ1残留を決めたヴァンフォーレ甲府。チームを指揮した城福浩監督は今季限りでの退任を発表している。そんな城福監督をいつも陰ながら支えてくれていたのは家族だ(『プロフットボーラーの家族の肖像』(カンゼン刊)より一部抜粋)。

text by いとうやまね photo by Getty Images

遠距離家族

城福浩 父の背中が語るもの
今季限りでの退任を発表している城福浩監督【写真:Getty Images】

 ヴァンフォーレ甲府の監督には、2012年に就任した。単身赴任である。部屋はどんなかと聞くと、「住めればいいくらいで、特にインテリアに気を使うでもなく、でも、結構ちゃんとしたマンションです」と返ってきた。掃除はまめにしているらしい。

 自炊はしない。食事はクラブの寮で食べることにしている。外食だと気を使うし、第一、何を食べようかを考えるのも面倒。それなら、寮で出されたものを食べた方が、気が楽だ。

 ただし、選手たちと一緒に食べることになるので、彼らがくつろいでいる時間帯は、極力さけるようにしている。みんながいなくなったころを見計らって、食堂に入るという。

 出てきたご飯は、早めに食べる。遅くなり過ぎて、食堂のおばさんに迷惑がかかるのも悪いからだ。なんだか、外よりも気を使っているような、気がしないでもない。

 甲府には、たまに妻が来てくれる。自分も二週間にいっぺんは、東京に帰っている。道が混んでいる週末を除けば、車で自宅まで二時間もあれば帰れる。東京と甲府は、思いのほか近い。

 離れていることで、逆に感情を出せることもある。こんなことがあった。甲府で、ちょうど試合をしているときに、自宅の犬が突然死んでしまったのだ。試合が終わり携帯電話に出ると、受話器の向こうの家族が、全員号泣していた。

 その時、ふと思った。「家族が、こうやって感情を表せるのは、悪いことじゃない」子供たちも成長し、親の前で泣いたりすることも、ほとんどなくなった。でも、今こうして自分の前で嗚咽し、悲しみを表している。城福は、遠く離れた地で、家族の悲しみを受け止めた。

「でもね、その時はっきりと言われたんですよ。『パパが死んでも、ぜったいに泣かない』って(笑)」

 自慢の家族である。

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