経済効果、CM出演から見るスターのリアルな価値
カズほど粋なスポーツ選手はなかなかいないと思う。ピッチ上でのトリッキーなドリブルやフェイント、ゴール後のパフォーマンスには“魅せてこそプロ”という精神が宿っている。記者との外連味のないやりとりや、ラテンの香りがするファッション……どこから見ても粋な男である。試合後、ミックスゾーンでカズを何度か取材したことがあるが、いつもそんなことを感じていた気がする。
そういう選手を「経済効果という観点から取材し、論じてほしい」という依頼が『フットボールサミット』から来たとき「なんて不粋な……」と思わず唸ってしまった。人を金銭的価値で計ることほど、粋と正反対の行為はない。しかし「カズという存在を、ただ礼賛するだけでなく多角的に検証したい」という説明を聞いてにわかに好奇心がわいたのも事実である。お金ほどリアルな尺度はない。「カズのリアルな価値とは?」それがこの原稿のテーマである。
とはいえ、経済効果とはいったいどういうものなのか、門外漢なのでいまひとつつかめない。経済学のタームで簡単に説明すると「当人の生産活動において、当人が動けば、どのくらいお金が動くのかという目安」ということになるらしいのだが、「サッカー女子W杯のドイツ大会で優勝した“なでしこジャパン”の経済効果は1兆円」などというメディアをにぎわした某研究所の試算を見ると、本当なのだろうかと半信半疑になってしまう。
そんな疑問を抱きつつ、専門家のもとへ足を運んでみることにした。『日本経済のほんとうの見方、考え方』(PHP研究所)などを著し、第一生命経済研究所の主席エコノミストを務める永濱利廣氏は、浦和レッズのサポーターでもあり、サッカーをはじめとするスポーツへの造詣が深い。今回の取材に適した人物だろう。