【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue59】掲載
ザッケローニ監督の代表監督就任の初陣となったアルゼンチン戦で確認できたのはゾーンディフェンスの組織的堅守だ。あれからしばらくはアジア勢相手に「いかに攻め勝つか」がテーマだったが、今回の欧州遠征の相手はフランスとブラジル。あのアルゼンチン戦以来となる、日本代表の守備がクローズアップされた連戦となった。その詳細な守備分析を、守備のスペシャリストであり、日本代表と同じゾーンディフェンスを駆使する栃木SC松田浩監督にお願いしようというのが本稿の主旨だ。
取材日は大敗を喫したブラジル戦の翌日。松田監督とともに試合の映像を見ながら、守備の課題が見られたブラジル戦の前半に絞って分析を聞いた。
ピンチを招いた要因は守備意識の低さ
「フランス戦はよく勝ったなという印象。ザッケローニ監督が『シャイだった』と言っていましたが、その通りでした。前半はそれもあり押し込まれましたが、無失点でゲームを進められたことが一番の勝因だと思います。必然的に守備意識が高まり、うまく守り勝ったのがフランス戦。
それで自信を得て迎えたのがブラジル戦でしたが、フランス戦と同じくらいの守備意識があれば、という試合だった。ザッケローニ監督はブラジル戦の前に『フランス戦のように守り勝つつもりはない』といったコメントをしていたでしょう」
かくして指揮官の宣言通り、ブラジル戦の序盤、日本は見事なパスワークでブラジルを自陣に押し込めた。2分半過ぎ、左サイドで長友(5)、香川(10)、本田(4)、遠藤(7)が絡んで何本もパスを回し、相手のペナルティエリア付近までボールを運ぶ。だが、本田が次の瞬間にボールを奪われ、そのままカカ(8)に渡る(図2分53秒)。
カカは間髪入れずに前線のネイマール(11)目掛けて正確で長いボールを足下に入れる。ネイマールは見事なワンタッチで広大なスペースに抜け出す。ブラジルの最初のカウンターシーンだ。日本の応対は吉田(22)と内田(6)の2人。