シンガポールリーグ、タンピネス・ローバーツFCに所属する元シンガポール代表のFWアレクサンダル・デュリッチが現地時間の31日、自身の現役ラストマッチとなるブルネイDPMM FC戦に出場。
ローバーツは2−1で勝利。44歳のデュリッチはチームの2点目をアシストし、引退に華を添えた。
試合後、デュリッチは『AFP』に対し、「非常に感動している」とコメント。
「この10ヶ月は、(引退に向けて)しっかりと準備してきたから、余裕があると思っていたけど、簡単には受け入れられないね」と、自身の引退について語っている。
デュリッチはシンガポールリーグで通算330ゴールを挙げた。カップ戦も含めればその数字は376にも及ぶ。これは一人の選手が単一のリーグで記録したゴール数としては現役選手史上最多。
さらにゴールだけでなく、獲得したタイトルも8度のリーグと3度のカップ戦優勝。3度のリーグMVPに加えて4度の得点王と、まさに”シンガポールの英雄”と呼ぶに相応しい実績を残した。
ユーゴスラビアで生まれ育ったジュリッチは1992年に始まったボスニア紛争を機に家族と離れ、世界中を飛び回ることに。17歳でスウェーデンに渡り、そこからハンガリー、オーストラリアを経て、現在のシンガポールへたどり着いた。
幼少期には成長障害を抱え、医師からカヤック(カヌー競技の1種)を勧められた。(その後、身長は192センチまで成長)
サッカーだけでなく、カヌーの実力もトップクラスのデュリッチは、ユーゴスラビアで4度ジュニアチャンピオン、さらには1992年のバルセロナ五輪に同国のカヌー代表選手として出場している変わり種だ。
サッカー選手としては2007年に市民権を取得したシンガポールで代表デビュー。この時すでに37歳となっていたが、そこから53試合に出場し24ゴールを決めた。
「44歳までプレーするとは思ってもいなかった」感慨深そうに振り返るデュリッチ。
「明日の朝は辛いだろうね。もうここにはドレッシングルームもない、ファンもいない。試合に向けたトレーニングも準備も何もないんだからね」
引退後はローバーツのフィットネスコーチを務めることになっている。
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