【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue60】掲載
クラブ社長と球団社長の違い
「サッカーはクラブ、野球は球団。まったく別物だよ。そこを混同して、ウチのクラブを『球団』とか書くライターがいるから、困ったもんだよね」
以前、クラブ経営に関わっていた方から、そのような指摘を受けて、いささかドギマギしたことがある。自分も駆け出しだった時代、クラブと書くべきところを無自覚に「球団」と書いてしまった記憶があるからだ。
果たして、クラブと球団はどう違うのか。私は「公共性の有無」と考えている。
クラブが地域に根差した「公共性」を自明としているのに対し、球団は私企業の「お抱え」というイメージが強い。最近は特にパ・リーグにおいて「地域密着」を打ち出しつつあるものの、どこまで公共性を有しているかといえば、まだまだ親会社の影響下から抜け出せていないのが実情だろう。
では、Jクラブとプロ球団チームの経営スタイル、そしてトップに求められる条件は、どう違うのだろうか。逆に、競技を超えて共通する経営理念というものは存在するのだろうか。
普段、サッカーばかりを観ている人間からすると、むしろプロ野球の球団経営や球団トップの人物像といったものが気になってくる。両者を比較するとしたら、クラブと球団、両方の社長を経験している人物に話を聞くのが最も効果的だろう。問題は、そういう打ってつけの人物がいるかどうかだ。
実は、いる。しかもふたりも。
ひとりは、広島カープ球団代表(75~81年)とベルマーレ平塚(現湘南)社長(97~99年)を歴任した重松良典(82)。もうひとりが、大阪サッカークラブ株式会社(セレッソ大阪)社長(00~04年)と北海道日本ハムファイターズ社長(06~11年)を歴任した藤井純一(63)である。