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明治安田生命J1リーグは第26節を消化した。“異端のアナリスト”庄司悟氏は、今節も様々なデータを組み合わせながら十字架を作り、Jリーグに起きている現象を取り出していく。厳しい残暑を乗り切るための「エコサッカー」を取り入れるチームが増える中、サガン鳥栖のデータから読み取れるのは…。(文:庄司悟)
残暑のエコサッカーと奇妙な試合
先週行われたJ1第26節はいつもの「十字架」(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらえればわかるように、第25節に引き続いて左下の「非優等生領域」に勝ちチーム(サンフレッチェ広島、アビスパ福岡、柏レイソル)が集結した。
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さらに、第26節で特に目立ったのは、「ボール支配率が50%以下で、シュート1本にかかった平均パス本数が10本台」のチームが4勝していることだ。第26節までのシュート1本にかかった平均パス本数の全体平均が32.4本であることを考えれば、注目すべき現象であろう。
第26節の得点、ボール支配率、シュート1本にかかった平均パス本数を羅列した図2を見てもらいたい。前記した「非優等生領域」で勝った3チームに加え、北海道コンサドーレ札幌はいわゆる「エコサッカー」に特化し、残暑厳しい9月の1週目を乗り切ったということだ。
一方で、シュート1本にかかった平均パス本数が50本以上だった横浜F・マリノス、アルビレックス新潟、サガン鳥栖は1分2敗の体たらくだった。なかでも鳥栖は80本と異様なまでに多い。思えば広島との試合(0対2)は「奇妙な試合だった」の一言に尽きる。両者の主な数字を以下に示す。
・鳥栖 ボール支配率57% 走行距離121.9キロメートル スプリント161本 パス成功数 400本
・広島 ボール支配率43% 走行距離119.1キロメートル スプリント154本 パス成功数 246本
すべての項目で鳥栖は広島を大きく上回っている。ところが肝心のシュート数はわずか5本止まり(広島は20本)では……。ちなみに鳥栖は第26節までのシュート1本までにかかった平均パス本数は、やはり51.8本とリーグ最多となっている。夏場はエコサッカーにプランを移す面々が多いなか、鳥栖だけはエコサッカーに見向きもしていないことが、この数字からわかる。
川井健太監督は「真夏でも溶けないコンセプト」を今後も貫き続けるのだろうか。せめて、相手がエコサッカーに見向いていることがわかっているならば、「夏バージョンへの対策」があってもよさそうなものだが、さて……。
(文:庄司悟)
庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
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