優れた技術と屈強なフィジカルで相手を寄せつけない
試合を決めたのは、家長昭博の一発だった。
26節・大宮アルディージャ対清水エスパルス。残留を争う両チームの直接対決は、1-1のまま後半28分を迎えた。大宮アルディージャが右からのCKを得ると、途中出場の渡邉大剛がGKから逃げるボールを入れる。これに反応した家長が、利き足とは逆の右足でダダイレクトボレーを放つ。するとボールは、敵味方入り混じるボックス内を縫うように一直線にゴールへ向かい、相手選手に当たって吸い込まれていった。一目散にベンチへと駆ける姿に、目の前の試合に勝つこと、そしてJ1残留への強い思いが見て取れた。
試合開始から攻勢に出た大宮にあって、攻撃の始まりはほとんどが家長だ。右サイドの彼に一度ボールを預け、味方とのパス交換から中央へと入る。
家長のいる右サイドや中央でゲームを作り、左サイドへ展開する。先制点もこの流れからで、泉澤仁と中村北斗のコンビネーションからズラタンがヘディングで先制点を奪った。
大宮にとって家長は欠くことのできない選手の一人だが、この清水戦も圧巻の存在感だった。
ボールを持てば奪われることはほとんどなかった。技術もさることながら身体の使い方も上手い。
対面したのは清水の水谷拓磨だったが、プレスに行っても家長の屈強な身体にブロックされてしまう。水谷も腰を落として必至に挑んでいたが、家長はお構いなしとばかりにボールを運び、パスを送った。
家長にパスが渡ると、味方も相手も動き出す。背番号41がボールを持つことでFWはゴールを意識したポジションを取るようになり、SBの選手は前線へオーバーラップしていく。そして逆サイドの選手もボールを受ける準備に入る。
すると相手もそれに合わせて守備を整える必要がある。当たり前の光景なのだが、家長が持つと大宮はスイッチが入ったかのように動き出す。ボールを持った家長を中心に試合が動いているように感じる。