失点は仕方ない? 難しいブレ球への対応
前半3分、ブルガリアのスタニスラフ・マノレフのフリーキックが日本のゴールを揺らした。マノラフが蹴ったのはいわゆる「ブレ球」。ボールに回転を与えないように蹴ることで、空気抵抗の影響を受けやすくし、不規則な変化を起こさせるキック技術だ。
GKからすれば通常のシュートに比べてボールの軌道が読みづらく、処理が難しい。試合会場で観ていても、まっすぐに浮いたボールがコースを変えて落ちていくのがハッキリとわかった。GK川島永嗣は両手でパンチングしようとしたものの、直前で微妙に変化したことで十分に当てることができなかった。
筆者は3年前に元日本代表GKで、現在は横浜F・マリノスのGKコーチを務める松永成立さんとGKの技術書を作ったことがある(『ゴールキーパー専門講座』東邦出版)。そのとき、松永さんに「ブレ球シュートの止め方」というテーマで話を聞くと「あれはGKにとっては本当に止めづらいんですよ」と苦々しい表情で語ってくれた。
つまり、ブレ球を決められてしまうのは、ある意味仕方ないということなのだ。
GKはセオリーを重視するポジションだ。シューターの状態やボールとの距離感によって数センチ、数ミリ単位でポジショニングを変えて最善の準備をすることが求められる。しかし、ブレ球はそうした準備を台無しにしてしまう。どれだけ良い準備ができていても止められるとは限らない。
川島によれば「キッカーの助走の入り方を見て、無回転で蹴ってくることはわかった」という。フリーキックのとき、GKはキッカーの立ち位置からボールの軌道を予測する。マノレフはボールのほぼ真後ろに立って、長めの助走をとっていた。これは無回転を蹴るときの助走の仕方だ。