サッカー日本代表 最新ニュース
サッカー日本代表はFIFAワールドカップカタールでPK戦の末にベスト16で敗退し、冬の全国高校サッカー選手権ではPK戦で決着がつく試合が多かった。PKをめぐる議論が巻き起こったのは記憶に新しい。季刊誌『フットボール批評issue39』で膨大なデータをもとにPK戦の本質に迫った佐藤祐一氏の論考を、フットボールチャンネルで一部抜粋して前後半に分けて公開する。(文:佐藤祐一)
データから明らかになるPK戦のセオリー
【前編はこちら】約1万件のPKを分析して分かった「成功率100%」究極のエリアとは?【PK戦データ解析】
しかし、図3をご覧いただきたい。ランダムに抽出した1万142件のPK結果のうち、上段隅①⑤エリアに蹴り込まれたのは約6.1%の600件ほどしかない。さらに先程提示した成功率はあくまで「ゴールの枠内」に蹴り込めた場合の話である。そもそも、ポストやバーのギリギリを狙った場合の成功率は約55.4%と、枠外にそれる可能性もはらんでいる。ただし、そのポストやバーに近い②③④⑥⑩⑪⑮のエリアはGKが反応して飛んでくることも多く、セーブされる確率も一定値ある。上段隅の①⑤エリアにはそれがない。いわば究極のエリアといえるかもしれない。
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究極のエリアをもう一つだけ定義するのであれば、真ん中(⑧⑬)も同様だ。本来GKが構えているエリアのため、蹴り込むケースは上段同様に高くはない。それでも、キッカー側が先にGKを飛ばせた上で真ん中に蹴り込んだ場合も100%だった。①⑤エリア同様、相当な技術とメンタルもしくは状況への慣れといったものも必要といえそうだ。
もちろん、対面するGKや相手チームのデータ次第では、決まったエリアへのギャンブルな選択肢ではなく、右または左の現実的な選択肢を採用するケースが一般的だろう。
今度は逆にこの図2、3からGKがどの方向に飛ぶことがセオリーかについて触れていきたい。もちろんこちらも、対面するキッカーや相手チームのデータ次第では、ギャンブルな選択肢は必要がない。特にGKはキッカー側の話で触れてきたようなギリギリのエリアまでをカバーすることは得策ではない。人間の身体とゴール全体の大きさを考慮すれば、キッカーが蹴り込んできたボールをストップする際、15エリアのうち、手と足を使った2エリア程度が守備範囲の限界値だ。
上段隅(①⑤)や真ん中下(⑬)などの蹴り込まれる確率が3.0%程度以下のエリアを重視しても仕方がない。
<雑誌概要>
『フットボール批評issue39』
定価:1,760円(本体1,600円+税)
特集:眠れないほど罪深い「PK戦」の話
10年間ご愛読ありがとうございました
まずはじめに言っておきたいのは、「PK戦」は面白いものではない。ペナルティー=罰という名称からして、そこかしこにネガティブな要素が散乱している。いい例として、観ている側は「アイツ、決めそうだな」とは言わずに「アイツ、外しそうだな」と言う。サッカー好きでなくとも戦犯を血祭りに上げられる残酷なシステムが面白いわけがないのだ。
それゆえ、特集企画のほとんどはネガティブなアプローチから生まれたような気がしている。冒頭のPK戦廃止論から始まり、脳のストレス、ルールのグレーゾーン……。そう、特集名どおり、まさに罪深い企画のオンパレードである。しつこいようだが、最終号となる本誌を読了したとて「PK戦」が面白くなることはない、と断言しておく。
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【了】