サッカー日本代表 最新ニュース
FIFAワールドカップカタール2022で、サッカー日本代表は決勝トーナメント進出という結果を残した。日本代表を率いる森保一監督は指導哲学を持っているのか。サンフレッチェ広島の指揮官を務めていた当時の著書、『プロサッカー監督の仕事 非カリスマ型マネジメントの極意』を一部抜粋して全3回に渡って公開する。(文:森保一)
森保一監督が貫く鉄則
試合が終わると、監督には記者会見という仕事があります。そこで監督として気をつけていることは、勝っても有頂天にならないこと、負けてもネガティブな表現ばかりにならないようにすること。それは、自分の言葉がメディアに載ったときのことを考えると同時に、僕が「自分らしさ」を忘れないためでもあります。
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日本では、海外の会見と違って最初に「試合の総括をお願いします」と言われることが多いのが特色ですが、そこで僕は、戦術について細かく言い過ぎないよう注意しています。
あのプレーは、こうやって準備をして、こういう練習をして、ゴールにつながった。ここがウィークポイントだと思って、こんな修正を施した。そういった細かい戦術は、できる限り明かさないようにするのが僕の鉄則です。
あのプレーが良かった。あの選手が難しいシュートを決めてくれた。そういう「結果」については話しますが、結果に至った「プロセス」に関しては、ざっくりとしたことしか口にしない。結果に至るプロセスには、意図通りだった場合と、意図通りではなかった場合があるので、その日のプレーがどちらだったのか、というのは極力明かさないようにしています。それは自分たちだけがわかっていればいい。そうでないと、対戦相手に分析され、次の試合で対策を立てられてしまいます。
もちろん、ファンやメディアの方からすれば、それこそが最も聞きたい内容でしょう。結果論にならざるをえないメディアの立場は理解していますが、監督としては「聞く側」に自由に判断してもらいたいと思う部分でもあります。
だから僕は、基本的に細かいことではなく、「選手たちが頑張っていた。走っていた。戦っていた」という話や、いつも応援してくれている方々への感謝の気持ちを話しています。
それに、選手にとっては細かい部分よりも、最後まで戦い続けること、走り続けることが何より重要だと僕は考えているので、そういったコンセプトがしっかりできていたなら、それは評価してあげなければいけません。走らないのに戦術が機能するはずはないし、本気でボールを奪おうと思わなければ奪えるわけがない。ゴールを決めることも、ゴールを守ることもそうです。細かい部分は後日、改めて選手たちにフィードバックするとして、まずはその試合をざっくり振り返ってあげることが必要です。
<書籍概要>
『プロサッカー監督の仕事』
著者:森保一
定価:1,760円(本体1,600円+税)
現役監督が明かす現場のリアルと指導哲学。
脱トップダウンの指導法が芯の強いチームを作る!
■J1リーグ連覇を達成した指揮官が日々考え、取り組んでいること
2012年、2013年とサンフレッチェ広島をJ1リーグ連覇に導いた森保一監督。
育成型クラブとして着実に成長を続ける広島で指揮官はどういった考えで指導を行っているのか?
シーズンを通したチーム作りからコーチや選手との関係、試合に向けての準備や采配など、
本書ではプロサッカー監督として日々、現場で情熱を注ぐ現役監督のチームマネジメントと指導哲学を実例まじえながらその極意を丹念に綴っています。トップダウン型ではないその指導法は時代の潮流にも合い、サッカーの指導者のみならず、ビジネスマンにとっても興味を持っていただける内容になっています。
【了】