交渉のイニシアチブはゲッツェが握っていた
まさに禁断の移籍劇だろう。
ボルシア・ドルトムントのエース、マリオ・ゲッツェのバイエルン・ミュンヘンへの移籍が発表されたのは4月末。寝耳に水の出来事にドルトムントのファンは混乱とともに激しい怒りをゲッツェへ向けた。
スタジアムでのブーイングはもちろん、中にはゲッツェのレプリカユニフォームを燃やすファンまで現れた。プロである以上、より良い待遇を求めるのは当然だが、ファンの怒りも理解できる。ゲッツェはドルトムントのユース出身で生え抜き選手。チームの顔とも言うべき存在だ。
それが、よりによってチャンピオンズリーグ決勝で対戦し、今季を含め3季連続でリーグ優勝を争うライバルであるバイエルンへの移籍。マイスターシャーレ奪還のためには欠かせない選手だったはずだが…。
さらにファンの怒りの温度が上がりそうな事実もある。それがゲッツェ有利とも言える契約だ。ゲッツェは昨年、契約を更改し、ドルトムントと2016年まで延長をした。年俸は4倍に上がったという。ここまではいい。長期契約はチームへの忠誠心の現れ、そしてチームのエースには十分な待遇を用意する。WIN=WINに思える。
ところが、1つのオプション(編注:契約解除条項)が存在した。3700万ユーロを支払うクラブがあれば移籍できる、というものだ。この金額は法外なものではない。潤沢な予算を持つクラブであれば、許容範囲だ。そしてゲッツェはこのオプションをクラブが受け入れることを条件に延長のサインを押した。
端からドルトムントに骨を埋める気などないのだ。3700万ユーロはクラブ側の必死の抵抗によるものだろう。最初の交渉の場ではもっと低かったことも考えられる。