映像制作は文句なしにBBCが世界一
岡野 ということで、前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ本題に移りましょうか。今回のW杯のテレビ映像は、オリンピックと同じですべてインターナショナル・コンソーシアムが制作したものですよね。
ということは、視聴者の方々はNHKや民放が制作してきたW杯予選や国際親善試合の映像と比較することができる。これは大きなポイントです。ネコちゃん(金子)と組んだ『三菱ダイヤモンド・サッカー』を含めて長く解説を務めてきましたけれども、サッカーの試合における映像制作が最も上手いのは文句なしでイギリスのBBCですよ。
なぜかと言えば、サッカー専門のクルーを擁しているからに他なりません。サッカーを熟知している職人たちが集まり、番組終了後に議論を重ねていくから映像のクォリティーも上がっていく。日本ではNHKでもサッカー専門クルーを持っていませんよね。
金子 残念ながらすべて外注です。
岡野 ちょっと古い話ですけど、NHKで仕事をしたときのカメラの方が「昨日はドラマを撮影していた」と言ったことがある。民放を含めて、そうした状況はいまも変わっていないはずです。普段からサッカーの試合を撮っていなければ、アナウンサーや解説者を含めて、より素晴らしい映像を作っていこうという議論が生まれる余地は残念ながらないですよね。
日本の映像で僕が何よりも不思議に思うのは、選手個人のアップが長すぎることです。例えばシュートを外した選手を、ずっと追っていることが珍しくない。BBCではあり得ないことです。すでに試合は動き出しているのですから。映像との絡みで言えば、アナウンサーも解説者もモニターを見ていないのではと、思わずにはいられないことがある。
刻々と変わっていく状況とは関係のない話が、延々と続くシーンが少なくない。解説者はモニターをしっかりと見ながら、「逆サイドが空いていますね」といった具合に、映像にない現象を指摘することでカメラをそちらへ向けさせる言葉も必要なんです。もうひとつは外来語の使い方ですね。
金子 これは重要なことですよね。僕も岡野さんには何度も教えられました。