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数多くの激闘が繰り広げられた2021/22シーズンが幕を閉じた。欧州各国でプレーする日本人選手たちは、果たしてどのような活躍を見せたのだろうか。今回は、オランダのPSVに所属する堂安律のシーズンを振り返る。(文:小澤祐作)
移籍を望んでいたが…
堂安律の活躍はサプライズだったと言っていい。そもそも、2021/22シーズンをPSVで過ごすこと自体がちょっとしたサプライズだった――。
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ガンバ大阪でプロデビューし、2017年に移籍したフローニンヘンでさらに評価を高めた堂安は、2019年にPSVの一員となった。当時のマルク・ファン・ボメル監督の下、開幕からしばらくはベンチ要員だったが、第4節フローニンヘン戦で移籍後初フル出場を果たすと、以降レギュラーに定着。上々のスタートを切ったかに思われた。
しかし、成績不振を理由にファン・ボメル監督が解任され、後任にフローニンヘン時代にも指導を受けたエルネスト・ファベルが就くと、出場機会がまさかの減少。ロジャー・シュミット監督を迎えた2020/21シーズンは、より多くのプレータイムを求めビーレフェルトにレンタル移籍することになった。
その堂安はビーレフェルトで非凡なパフォーマンスを披露し、1部残留の立役者になっている。金銭面の事情で完全移籍への移行は叶わなかったが、ドイツの複数クラブからのオファーを受けることに成功した。堂安自身もドイツでのプレーに手応えを得ていたため、2021/22シーズンはPSVに戻らず、ブンデスリーガのクラブに移籍することを希望していたようだ。
しかし、すでにオランダから心が離れかけていた中、PSVを率いるシュミット監督にチームに残留するよう説得された。無論、ビーレフェルトでの活躍ぶりを高く評価されたからだ。実際、堂安はオランダ『Voetbal International』に対し次のように語っている。
「とくにブンデスリーガのクラブから興味を持たれていたので、そこでチャンスを掴みたいと思っていました。でも(シュミット)監督が行かせてくれなかった。監督は、僕のクオリティーを信頼しているし、多くのプレータイムを得られるから残るべきだと言ったんです」
当然、堂安の中で迷いが生じた。上記のコメントの後に続けて「心では監督を信じたかったが、頭が信じるなと言っていた」と話している。無理もない。いくら「信頼されている」と監督から言われても、満足いく出場機会を得られる保証はどこにもない。ただでさえPSVには10番を背負う若手有望株のノニ・マドゥエケや新たなスター候補であるヨルベ・フェルテッセンなどという強力なライバル達がいた。そして何より堂安は、過去に一度PSVでの苦労を味わっている。残留を即決できないのは、至極当たり前のことだったと言えるだろう。
それでも、最終的に堂安はシュミット監督の説得に負ける形でオランダの強豪に残留。結果論になるが、この決断は間違いではなかった。