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暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その3)

新国立競技場問題が混迷するなか、後藤健生の手によって、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ――』という一冊の本が生み出された。国立競技場の歴史を紐解き、その将来像を描き出した渾身の書である。そこで、64年の東京五輪を国立競技場で観戦していた後藤健生と佐山一郎が、「巨大スタジアム」をめぐって論議した。

text by 佐山一郎

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可動式の座席はピッチのギリギリまでは延びない

佐山一郎(以下、佐山) 以前、国立競技場の芝の管理者から聞いたんだけど、サッカー利用の場合はJリーグ発足後のスキルや戦術の向上で、芝草の痛みが和らいだと。あとは、「可動式スタンド」の概念がよく見えて来ないですね。

後藤健生(以下、後藤) 可動式の座席ということではパリ北郊サン=ドニのスタッド・ド・フランスがそうだけど、ピッチのギリギリまでは延びない。傾斜もなだらかだし、記者席の位置も陸上競技場対応。ああいう陸上兼用でW杯の決勝をやるのは、これからはもうないんじゃないかな。

佐山 ゴール裏を半月型状態のままで延ばさないときもありますね。2007年はラグビーW杯決勝もやり、2003年には世界陸上もやり、しかもローリング・ストーンズもやりで、どうもこのあたりをライバル視しているきらいがあるな。収容能力も8万1338人だし。ただ冒険主義的でモンスターっぽいザハ案のような開閉屋根部分はない。

後藤 ザハ案のまま屋根を付けたら、芝をまた一からやり直さなければならなくなる。あの屋根は相当、通風が悪そう。今の国立が世界に誇れる最高の芝の状態を保てるのも、屋根がないのが幸いしたからですよ。

 25年前のように5万人規模のスタジアムが一つしかないという時代なら、みんなで譲りあって頑張って一緒に使うしかないんだろうけど、今は多目的よりも棲み分けをはっきりしたほうがすべての人にとって良いんですよ。

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