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「だからこそ、クロップはトップクラスの監督なのだ」。リバプール敏腕コーチが激白【名参謀の流儀・独占インタビュー中編】

text by アルトゥル・レナール photo by Getty Images

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プレミアリーグ優勝をあと一歩でのがしたものの、今季のリバプールは国内カップ戦2冠(FAカップ、リーグカップ)を達成し、UEFAチャンピオンズリーグでは過去5シーズンで3度目となる決勝進出を果たしている。「参謀がサッカーチームを決める」と題した『フットボール批評issue36』(6月6日発売)では、名将ユルゲン・クロップの右腕として高く評価されるペピン・ラインダース(リバプールアシスタントコーチ)に独占インタビュー。今回はそのインタビューを一部抜粋し、3回に分けて公開する。(取材・文:アルトゥル・レナール、翻訳:山中忍)


トップクラスの指揮官、ユルゲン・クロップ

ユルゲン・クロップ
【写真:Getty Images】

―いわゆる「参謀」として監督を支える立場ではあっても、やはり世界最高クラスの指揮官からは学ぶことも多い?


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「ユルゲンには、何よりも近代的な“トータルフットボール”の在り方を教えてもらったと思っている。ピッチ上の選手たちにしても、練習を通して彼らを導くコーチ陣にしても、全員が共同で責任を持つことが求められるスタイルだ。試合中、マイボールであってもなくても主導権を握る戦い方を実現するためには、想定されるあらゆる局面を考慮した練習メニューを組んで準備する必要がある。

 共通意識を持つ一方で、異なる領域への理解と対応をレベルアップするために、細分化や専門化が進んでいる理由もそこにあると思う。彼は、そうした方法論を示してくれた監督。能動的な守備が前線の選手たちによって始まるようなチームを作り上げるためのね。それはカウンタープレッシングをマスターするための一要素でしかないわけだけど、ユルゲンは、そういった要点を徹底するための取り組みにおいて、主体性や想像力を発揮しやすい環境を生み出すことがとてもうまい。

 彼のチームでは、選手間の意思の疎通とか連鎖反応、あるいはタイム感といったポイントも練習で強化できるのだと確信が持てる。だからこそ、ユルゲンはトップクラスの監督なのだと思う。リバプールのトレーニングセンターでは、プレッシングを基本とするチームのための“上級特別コース”が毎日開催されているようなものさ」

―クロップ体制下での監督とコーチ陣、そして選手たちとの関係をひと言で表現するとしたら?

「僕は『ファミリー』という言葉を使いたい。互いを思いやる気持ちと、絶対的な信頼に溢れていると感じられるから。間違いない。よく『あの親にしてこの子あり』と言うけど、同じことがチームにも言える。何かを理解させようとする時に、自分が手本になること以上に効果的な方法はないわけだから。コーチ陣が物事をわきまえた人間であれば、規律や自己管理に関して口うるさく選手たちに言う必要はない。彼らの間にも同じことが言えて、リーダー格のヘンド(ジョーダン・ヘンダーソン)、ミリー(ジェームズ・ミルナー)、ヴァージル(フィルジル・ファン・ダイク)たちがしっかりしているから、他のチームメイトにも手はかからない。

 ユルゲンは、それこそ一家の主人のようにスタッフや選手たちのことを気遣ってくれるよ。どの世界の職場でも言えることだと思うけど、互いに人間同士の監督とコーチ陣、そしてコーチングスタッフと選手たちの間でも、まずは人としての思いやりと、そこからくる信頼感がなくては何も始まらない。

 それから、相手を信頼して任せる勇気。監督は2つのタイプに分けられると思うんだ。いろいろな意味で勇気のある監督と、そうではない監督。リバプールでは、勇気の持ち主がファミリーを束ねていてくれる。それが、単純に個々の力を合わせた以上の力を集団として発揮させる。指導の現場でのキーワードからして『コレクティブ』だからね」

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定価:1650円(本体1500円+税)

特集:参謀がサッカーチームを決める

「未来予想図」を作れない軍師はいらない

「参謀」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは“残念ながら”牧野茂だ。プロ野球・読売ジャイアンツの川上哲治監督を戦術面で支え、前人未到のV9を成し遂げたのはあまりにも有名である。組織野球の技術書『ドジャースの戦法』をそれこそ穴の開くほど読み込み、当時の日本では革新的な組織戦術でセ・パ両リーグの他球団を攪乱していった。しつこいようではあるが、サッカーチームの参謀ではない、残念ながら。

言い換えれば、すなわち日本のサッカー界で誰もがピンと来る参謀はいまだにいない、ということだ。世界に目を向けると、クロップにはラインダース、ペップにはリージョ、アンチェロッティには息子ダヴィデと、参謀の顔が瞭然と見える。今や参謀がチームの行く末を決定づけているなかで、日本ではそもそも参謀の役割すら語られることがない。日本から名参謀を生むためには、参謀の仕事をまずは理解することから始めなければならない。

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【了】

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