【前編はこちらから】 | 【フットボールサミット第11回】掲載
まずは出資6市から新規ファン獲得への道
コアなファンを納得させた上でライトユーザーにやさしい状態をつくる重要性は大金常務も認識していた。
「今までは自分のことだけで精一杯という運営でしたが、サッカー以外のところで満足度を上げられるのかを、もっと深く掘り下げていきたい。ライト層は1回目の印象が大事ですから、おもてなしの質を上げていかないと。設備は改善しきれなくても、おもてなしの気持ちを忘れずに対応することが重要だと思います。言い方を変えると、アルバイトまで含め、スタジアムで受け入れる側の何百人が共通のおもてなしの意識を持つことで、サービスの質を高めることはできるわけですから」
観戦環境を整えていけたとして、そこにどうやって新規のファンを連れてくればよいのか。
度々「FC多摩」、「FC調布」、「FC西東京」と揶揄されるほど、東京都は東西に広く、そして味スタと小平グランドは西側にある。いきおい、東側の半分、23区からの来場者は少なくなる。
そこには当然対策を打つにしろ、まずは西側のマーケティング、掘り起こしを優先するのは自明だ。
「23区が弱いんですよ。実は東京は都心に近いほど地方出身の方が多くて、生粋の東京都民はあまりいない。『江戸っ子』が住んでいるのは、下町や都下なんです。来場者のマーケティングをすると味スタの周囲10㎞圏内から来ている人が多いんですよ。だから、もっとそこに営業をかける必要がある。出資6市(府中市、三鷹市、調布市、小平市、西東京市、小金井市)に120万人くらいの方がいらっしゃるうち、2万3995人(2012年シーズンリーグ戦平均)しか来ていない。もっと声をかければ、もう少し来ていただけるのではないか、と」(阿久根社長)
そのお膝元、出資6市を中心として活動を行っているホームタウン推進部長の高橋彰も声を揃える。
「東京にはこれだけ多くの人がいる。一人一試合でいいから足を運んでくれたら、と考えたとき、出資6市の総人口を20試合で割ると約6万人になるんです。まずはその分のチケットをもっと売ることを考えないといけない」
味スタ周囲の出資6市の住民一人ひとりが年に一度、味スタに行くだけで、毎試合満員を達成できる計算だ。
もちろん実際にはそこまで簡単にはいかない。徒歩圏内はともかく、自転車になると、たとえば小平から出発した場合、帰路で小金井の急な登り坂にぶつかって立ち往生することもある。地図上をタテにバスや電車を乗り継いでいくと不便なので、結局は西武新宿線で高田馬場へと移動、JR山手線に乗り換えて新宿へ向かい、京王線で飛田給へと向かうまわり道を選ばざるを得ない。
「小平から味スタまでは一時間かかります。たとえば江東区や品川区から味スタに来ていただくのはさらに大変です。だからこそ、まずはスタジアム半径10㎞圏内の、味スタが見えるくらいの範囲に住む人が、FC東京が勝ったという新聞記事を見て『スタジアムへ行ってみようかな』と思ってもらえるような布石を打つのが私たちの仕事です」(高橋部長)