ミュラーやクロースはなぜ生まれた
チャンピオンズリーグで初のドイツ勢同士による決勝戦が実現した。これはたまたまではない。UEFAライキングでイタリアを抜くやいなや、今では大差をつけている。バイエルン・ミュンヘンだけでなく、それ以外のクラブも着実に結果を残している証拠だ。
ドイツには中東やロシアからのオイルマネーは注入されていない。バイエルンは欧州屈指の巨大クラブだが、ブンデスリーガは健全経営が義務付けられている。スター選手を買い集めて強化することができないのだ。
では一体どうやって力をつけてきたのか。ドイツのS級ライセンスを保持し、ブンデスリーガに精通する鈴木良平氏は3つのポイントをあげた。
「最も大きな要因はベッケンバウアーの発案で行った育成の大改革です。ドイツはユーロ2000での惨敗(1分2敗でグループステージ敗退)を受けて『このままでは世界に取り残される』という危機感を覚えました。
これまでも整備された育成組織はありました。それをさらにきめ細かくしたのです。ドイツ全土を377に分け、そこに約1000人の指導者を派遣し、10~18歳の才能ある選手をピックアップしやすくしました」
ポッと出てきたタレントを選ぶのではなく、協会が主体的に選手にアプローチする。いい選手をさらに伸ばすために力のある指導者が直接目をかけることで、エリート教育をし、才能を逃さないようにしたのだ。
ミュラーやクロース、ロイスなど国産の優秀な選手が頭角をあらわすようになったのはこのためだ。
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