かつてないほどの熱気
「1人退場になったし、同点にも追い付かれた。ずっと守ってばっかりで、危ないシーンもたくさんあって、最後はPK戦になって……でも、勝った!」
「これで世界のベスト8だ! みんな通りに出てきたよ。今日はフィエスタ(祝宴)だ!」
マイケル・ウマニャのキックがネットを揺らし、コスタリカのベスト8進出が確定した直後、私はコスタリカ渡航時にいつもお世話になっているホストファミリーに電話を掛けた。受話器の向こうからは、ファミリーの興奮した声が聞こえてきた。いつも陽気で朗らかな方たちだが、これほどハイテンションな声は聞いたことがない。コスタリカのベスト8進出は、彼らにとってそれほどの歴史的偉業なのだ。
首都サンホセも、かつてないほどの熱気に包まれた。日本の一部ファンが渋谷のスクランブル交差点に集うように、コスタリカのサポーターは「フエンテ・デ・ラ・イスパニダー」という場所に集まって喜びを分かち合う伝統がある。
ここはサンホセ中心街のメインストリートと環状線が交差する場所で、ロータリー中央の噴水が目印。ショッピングモールやファストフード店、家電量販店などがあり、また交通の要衝でもあるため、普段は交通渋滞が絶えない。
一方で、コスタリカがW杯出場を決めた時などは、赤いユニフォーム姿のサポーターが集結し、国旗を振りながら飛び跳ねてチャントを歌ったり、噴水に飛び込んだりと、お祭り騒ぎが夜遅くまで続く場所でもある。
グループステージのウルグアイ戦やイタリア戦で勝利した後も多くのサポーターがここに集まり、交通は麻痺状態だったのだが、ギリシャ戦後の熱狂ぶりはそれまでの比ではなかった。中央の噴水から四方に伸びる道路がサポーターで埋め尽くされ、さながら赤い川のようになっていた。