「チリは一番難しい相手」。ジュリオ・セーザルの活躍でPK戦制す
「カンペオン・ヴォウトウ(王者が戻ってきた)」
ミネイロンスタジアムに詰めかけた6万人近いブラジル人サポーターが、劇的なPK戦での勝ち上がりに歓喜の歌声を挙げる。スペインを下して世界一に輝いた昨年のコンフェデレーションズカップ以降、定番になったチャントである。
PK戦で獅子奮迅の活躍を見せたジュリオ・セーザルによって、劇的な8強進出を決めたブラジルではあるが、ピッチ内で見せたパフォーマンスは「カンペオン」を名乗るにはほど遠いものだった。
「もし選べるのならば、違う相手を選んでいた。チリは一番難しい相手だと思う」(スコラーリ監督)。過去の対戦成績は68試合でブラジルの48勝13分け。前回の南アフリカ大会を含めて過去3回のW杯でも全勝しているチリではあるが、王国の指揮官は戦前からチリへの警戒心を隠さなかった。
決勝トーナメントはブラジル風に言うならば「マタ・マタ(殺し合い)」。後のない一発勝負の舞台に向けてスコラーリ監督は不振のパウリーニョに代えて、カメルーン戦で1得点1アシストの活躍を見せたフェルナンジーニョを抜擢。
さらに懸案事項のダニエウ・アウベスのサイドをケアすべく、守備にも長けたオスカールを右サイドに配置した。
立ち上がりこそ、ボールを支配し、19分には平均身長175センチと16強中、もっとも上背がないチリ守備陣の泣き所を突き、ダビド・ルイスがCKキックから先制点。沸点に達したミネイロンの盛り上がりはセレソンの攻撃を加速させるかに思われたが、エースのネイマールがチリの激しいマークに沈黙する。
「序盤の2回の競り合いで試合中ずっと違和感があった」とネイマールは振り返ったが、本来組み立てを担うべきオスカールは右サイドの守備のフォローに追われ、攻撃時に違いを生み出すことが出来ない。