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サッカーとはどういったスポーツなのか。机上で考えはじめるとキリがない。『フットボール批評issue35』(3月7日発売)では、サッカー4局面の解剖学と題しサッカーのトランジションについて考察している。今回は、発売に先駆け、サッカー指導者としてメキシコで武者修行し、1つの本をきっかけに単身ポルト大学に留学した“行動力の化身”安田好隆(ガンバ大阪ヘッドコーチ)のインタビューを一部抜粋で公開する。今回は前編。(文:小澤一郎、インタビュイー:安田好隆)
メキシコとポルトガルにおける「4局面」の解釈
――今、サッカーの局面を4つに分けて整理、理解することが一般化していて、セットプレーを含めると「4+1」なのかもしれませんが、安田さんもサッカーを4局面に分けて理解されていますか?
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「便宜上、4局面+1(セットプレー)にしておいたほうがわかりやすい部分はもちろんあります。ただ、サッカーを理解するうえでは、攻撃と守備を切り離すことはできません。攻撃と守備はつながっているからです。よく言われる『シームレス』なものであると思います。
しかし、実際の指導現場では、局面ごとに切り分けたトレーニングはしています。というのも、毎日11対11のゲーム形式の練習はできないからです。
トレーニングにおいてサッカーのゲーム性を失わないためには、11対11のゲームを毎日やるのが一番いいのかもしれません。しかし、選手の体は精密機械ですから、毎日11対11をすることは難しい。
また、サッカーというスポーツは『意思決定のスポーツ』だと理解していますので、数ある選択肢の中から最適解を選択することが大切になってきます。4局面を分けてトレーニングするメリットとしては、反復回数を増やせること。ゲームをやっていたら10分に1回程度しか起きない現象を、そこだけを切り取ってやれば10分あれば30回程度の反復練習ができるかもしれない。
例えば、クロス対応でどのように守るのか、ビルドアップ時のコントロールをどのように止めるのか。そういったものに関してはゲーム形式でやるよりも、局面で切り取って反復回数を稼ぐほうが意思決定を助ける、判断基準を共有するには、いい場合もあります。あとやはり、体の負荷です。切り取るほうが体の負荷を下げた中で練習ができます」
――指導者としてメキシコとポルトガルでの経験をお持ちですが、10年近く前から両国には4局面で捉えるサッカーの解釈、理解のようなものがあったのでしょうか?
「ありましたね。僕がメキシコにいたのが15年ぐらい前ですが、その頃からありました。当時のメキシコではマルセロ・ビエルサ監督(現リーズ)がアトラス、クラブ・アメリカといったクラブの監督を務めていて、自分がメキシコに行った少し前に退任されているのですが、彼が残したものがすごく普及している印象でした。
ポルトガルでは、ポルト大学に行きましたが、一つ例を挙げると『守備と攻撃とトランジションのトレーニングはするが、それらの間と間をつなぐトレーニングをしていない』みたいな議論がよくされていました。攻撃から守備の間にあるもの、守備から攻撃の間にあるもの。
ポルトガルの人たちは、細かい部分まで理屈で考えるのが好きなのでよりシームレスに近づくためには、その4局面の間、間の境界線でどういうプレーをするのかまで落とし込む必要がある、といった話です」
『フットボール批評issue35』
<書籍概要>
定価:1650円(本体1500円+税)
特集 サッカー4局面の解剖学
「攻守の切り替え」は死語である
サッカーの局面は大まかにボール保持、ボール非保持、攻撃→守備、守備→攻撃の4つに分けられる、とされている。一方でビジネスの局面は商談、契約などには分けず、プロジェクトの一区切りを指す意味合いで使われることが多いという。しかし、考えてみれば、サッカーの試合は区切りにくいのに局面を分けようとしているのに対し、ビジネスの場面は区切れそうなのに局面を分けようとしていない。禅問答のようで非常にややこしい。
が、局面そのものを一区切りとするビジネスの割り切り方は本質を突いている。プロジェクト成功という目的さえあれば、やるべきことは様々な局面で自然と明確になるからだ。ならば、ビジネス以上にクリアな目的(ゴール)があるサッカーは本来、ビジネス以上の割り切り方ができる、はず。結局のところ、4局面を解剖する行為は、サッカーの目的(ゴール)を再確認するだけの行為なのかもしれない。
【了】