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[4-3-3]というシステムはサッカー日本代表、J1王者川崎フロンターレをはじめ多くのチームが導入している。[4-3-3]にはどんな特徴があり、どのようなリスクをはらんでいるのか。1日平均5試合、年間1500試合を観戦する変態による変態フォーメーション本『サッカーフォーメーション図鑑 配置の噛み合わせが生む位置的優位性を理解する』(龍岡歩著、2月15日発売)より、ポゼッション原理主義と称される[4-3-3]というフォーメーションのメカニズムを書籍から一部抜粋して公開する。今回は前編。(文:龍岡歩)
[4-3-3]の特徴とグアルディオラのリスク解消法
[4-3-3]の特徴はまずボールを自分たちが保持したいと考えた時に一つの最適な配置である、ということがいえる。なぜならパスを快適に回すにあたって非常に理想的な配置に選手が散らばっているからだ。パスを回すには縦105×横68メートルのピッチ全体を目一杯に使ってボールを動かすことが重要だ。ボールは人より速いのでボールを大きく動かすことで、パスを受けた選手が常に「スペース」と「時間」を確保した状況を作り続けることができる。
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反対に狭いエリアでボールを動かし続けると守備が間に合ってしまい、時間とスペースがない状況でのパス回しはやがてボールを失う結末を招くはずだ。その点、[4-3-3]のフォーメーションは3トップの両WGがピッチの両「幅」を常に目一杯確保できる利点がある。この幅を確保するWGという人員を置くことが、このフォーメーションの一番の狙いといってもよいだろう。守る側からすると、両ワイド一杯に開く彼らWGを同時に捕まえておこうと思ったら守備ブロックを大きく横に広げざるを得ない。
ピッチ全体に散らばる配置のバランスの良さも[4-3-3]の特徴だろう。選手と選手を結んだ時に多くのトライアングルがピッチ上に描かれる。全員がきちんとした立ち位置に並ぶと自然とボールホルダーに複数のパスコースが生まれるようになっているのだ。その結果、ボール保持率が上がるというのが理想的な[4-3-3]のあるべき形だろう。ゆえにポゼッションスタイルを志向する監督、立ち位置を重視したポジショナルプレーの思想がある監督に特に好まれるフォーメーションになっている。
だがその反面、配置のバランスが良すぎて、最初の立ち位置から動きづらいという弊害を生むこともある。これがポジションの膠着化、そして攻撃の膠着化にもつながりかねないという一面を持っている。難しいのが、だからといって下手に動きすぎてもかえって全体のバランスを崩しかねないということだ。何しろ[4-3-3]は最初の立ち位置が非常に優れているからだ。
ペップ・グアルディオラやズデネク・ゼーマンといった監督は面白いやり方でこの[4-3-3]のリスクを解消している。彼らが導入したのは「人は動くが配置は動かさない」というメカニズムだった。例えばサイドに配置されているSB、IH、WGの3人を1つのユニットとして捉え、彼らのポジションをローテーションで入れ替えるのだ。トライアングルが時計回りにぐるっと動くと言えばイメージしやすいだろうか。結果的に配置は変わっていないのだが、人が入れ替わる動きがあるのでフォーメーションに流動性が加わっている。そして攻撃に躍動感が生まれるのだ。
『サッカーフォーメーション図鑑 配置の噛み合わせが生む位置的優位性を理解する』
<書籍概要>
定価:1870円(本体1700円+税)
1日平均5試合、年間1500試合を観戦する変態による変態フォーメーション本
サッカーフォーメーション界のイロハのイ[4-4-2]から滅多にお目にかかることのない[3-4-3(ダイヤモンド)]までを完全網羅した、フォーメーション変態のフォーメーション変態によるフォーメーション変態のための一冊。4バックと3バックのフォーメーションに分け、フォーメーションごとの強みと弱み、メカニズム、観戦チェックポイントを紹介し、対全布陣噛み合わせ一覧、過去の名チーム、フォーメーション名勝負数え歌なども収録。
【了】