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谷口彰悟の言葉に隠れた日本代表成長のヒント。「出し入れをためらうシーン」が示唆することとは?【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

谷口彰悟
【写真:田中伸弥】



 カタールワールドカップのアジア最終予選が27日に行われ、サッカー日本代表は中国代表に2-0で勝利を収めた。

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 序盤から主導権を握った日本はFW大迫勇也のPKとMF伊東純也のヘディングシュートで2点を奪い、中国に完勝した。ボール支配率60%、相手に許したシュートはわずか2本という圧倒的な展開を下支えしたのは、DF板倉滉とDF谷口彰悟が組んだセンターバックコンビだ。

 DF吉田麻也やDF冨安健洋が招集メンバーから外れたことで、不動のセンターバックだった彼らの不在による影響が心配されていた。だが、それも板倉と谷口のパフォーマンスによって杞憂に終わった。

 日本代表を率いる森保一監督も「2人とも試合の入りから落ち着いてプレーしてくれていましたし、ビルドアップでも相手を止めるディフェンスでもチームをコントロールしながら、かつ個々の局面で相手を上回っていく上手さと強さを見せてくれたと思います」と2人の活躍ぶりを称えた。

 アジア最終予選初出場となった谷口も「今日は僕と(板倉)滉がチャンスをもらいましたけど、出た選手がきちんとしたパフォーマンスを発揮するのが代表。普段出ている選手たちがいない中でも、きちんと仕事するのはすごく大事だし、そうやってまた新たな競争が生まれていけばいいと思うし、自分もどんどん食い込んでいきたい思いが強い」と手応えを感じているようだった。

 谷口は序盤から正確な組み立てや積極的な縦パスで存在感を発揮した。パスコースの作り方も巧みで、常に細かくポジショニングを調整しながら味方のパスを引き出して後方からゲームメイクをサポートしていた。そして、彼の言葉を紐解くと日本代表がさらに成長していくヒントが示されていた。

「相手がどう出てくるか分かりませんけど、基本的にブロックを組んでくる予想はしていました。そうなると僕だったり(板倉)滉だったりが(ボールを)持つ時間は多少長くなるかなと予想してました。

そうなったときにインサイドから守田(英正)だったり(田中)碧を引かせるよりは、彼らが相手の嫌な位置にしっかりパスを出し入れしたりとか、1つ飛ばしてサコさん(大迫勇也)とかに一発で(パスを)通せればチャンスは広がるなというイメージはずっとしていました」

 実際に板倉と谷口が相手の寄せに影響されず的確に配球できることから、インサイドハーフのMF田中碧やMF守田英正がサポートのためにディフェンスラインまで下りてくる回数は少なくて済んでいた。

「僕らが持つ時間はけっこう長くなると前にスペースがあって、インサイドハーフやボランチの選手じゃなくて自分たちが持ち上がることで相手がどう動いてくるかは常に見ていましたし、前半は間(のスペース)を閉めにきていたので、(長友)佑都さんを高い位置にして、相手が閉めてくれば(サイドで)高い位置が取れるので、そこにボールを出していました」

 守田や田中が高い位置に残り、相手は中央にスペースを作らないよう守備ブロックを敷いている。また、前から積極的にプレスをかけてくるわけではなかったため、谷口や板倉はボールを持ったまま前進して相手を引きつけながら、フリーになる味方へパスをつけるというプレーも頻繁に見せた。この持ち上がりの判断は吉田や冨安よりも巧みかつ効果的だっただろう。

 しかし、「普段(川崎フロンターレで)やっているようなビルドアップで、どこにパスを出したりするのが効果的なのかを考えながら今日のゲームもできた」一方では「(パスの)出し入れをためらうシーンは結構あったので、そこはもっとコミュニケーションとって、もっと伸びていく部分かなと思います」とも谷口は語る。

 これが日本代表の成長を促すヒントになるかもしれない。谷口の目には遠くのスペースやフリーの選手が見えていて、フロンターレなら縦パスをつけられると感じた瞬間が多くあったのだろう。

 これまで吉田や冨安はボールを持ったまま前に運びつつ、中盤の狭いスペースに縦パスを入れるようなプレーを板倉や谷口ほど積極的にはしてこなかった。チームメイトたちはその感覚に慣れているため、谷口らが「出せる」と感じた瞬間を「パスを受けられる状況」だと認識できていなかった可能性がある。

 谷口の目にはどんな時にどんな風景が見えていて、どういった状況ならどこへパスを出せるのか。それを映像や彼自身の言葉とともにチーム全体で共有できれば、今後はもっと効果的な攻撃を展開できるかもしれない。そして吉田や冨安とも共通認識を作れれば、センターバックに誰が起用されても谷口や板倉と遜色ないビルドアップの質を実現できるかもしれない。

 センターバックのコンビが不動だったのもあって、森保一監督が率いるチームは最後方からのビルドアップについて大きく手を加えてこなかった。今回、フロンターレ流を熟知する谷口や板倉が台頭したことで、チームとしてさらに成長できるきっかけが見えてきたのだ。

「まだまだ合わせていかなければいけない感覚的なところとか、ここに顔を出してほしい、このタイミングで(パスが)欲しいというのはもっと良くなるし、もっと良くしていけないといけないなと思います」

 この谷口の言葉の通り、選手たちの目やプレーへの認識、そしてタイミングを合わせていく作業を進められれば、日本代表はもっと進化できる。緊急事態だった中国戦は、それが逆に大きな収穫を生む結末となった。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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