浦和レッズはサッカー天皇杯(第101回全日本サッカー選手権大会)を制した。今季就任したリカルド・ロドリゲス監督の下、抜本的な改革を施した今季は、最高の結末で締めくくられている。新たなチームに待っている未来とは……。(取材・文:ショーン・キャロル)
レジェンドの退団と最高の結末
あるチームがタイトルを獲得した時に、その勝利を2種類の文脈のどちらかに位置づけようとすることがしばしば行われる。
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ひとつはそのタイトルを、長く苦しい道のりの果てに辿り着いた栄光であったと捉える考え方だ。長年にわたってあと一歩のハードルを越えられなかった川崎フロンターレが、2017年に初のJ1優勝を成し遂げた例などがそうだった。
あるいは、例えばヴィッセル神戸の2019年天皇杯優勝のように、力をつけてきているチームが翌年以降にさらなる飛躍を遂げるためのステップのように考えられる場合もある。
だが先週末の天皇杯決勝で大分トリニータに2-1の勝利を収めた浦和レッズは、やや特殊なケースだった。2つの感覚が同時に引き起こされた優勝だったと言える。
国立競技場で行われる決戦を前にして、盛んに話題となっていたのは阿部勇樹、宇賀神友弥、そして槙野智章にとってこの試合がレッズの選手としてラストマッチになるという事実だ。爽やかな午後の試合が進められていく中でも、その意味の大きさを意識せずにはいられなかった。
現役を引退する阿部はベンチにも入らなかったが、宇賀神と槙野はそれぞれ交代選手として後半途中から出場。後者は浦和が1-0でリードし勝利を目前にしていると思われた後半残り7分の時点で、トレードマークの“ミニ・ハカ”を披露してからピッチ上へ飛び込んでいった。土壇場で同点ゴールを許しながらも、最後は93分に他ならぬ槙野が劇的決勝点を叩き込み、3人の物語をハッピーエンドで締めくくった。
だが感動的な結末を迎えると同時に、今回の優勝は、リカルド・ロドリゲス監督のチームが今後のメインディッシュに向けてさらに食欲を強めていくための一種の前菜であるという感覚も強く感じられた。