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アーセナル移籍は冨安健洋に何をもたらしたのか? プレミア経験者は語る「壁にぶつかっているとは思うけど…」

text by 編集部 photo by Getty Images

冨安健洋
【写真:Getty Images】



 日本代表のゴール前には2枚の高い壁がそびえ立っている。DF吉田麻也とDF冨安健洋は、2018年の森保ジャパン立ち上げ当初から不動のセンターバックコンビとして君臨してきた。

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 吉田は変わらずヨーロッパの第一線で活躍を続け、冨安は順調のステップアップを遂げている。今夏、22歳でイタリア・セリエAのボローニャからイングランド・プレミアリーグの強豪アーセナルへ移籍し、すぐさま右サイドバックのレギュラーに定着した。

 サウサンプトンに7シーズン半在籍した経験を持つ吉田は、プレミアリーグを生き抜いてきた先輩として冨安の挑戦する姿を見て「この2ヶ月、非常に充実した時期を過ごしているんじゃないかなと思います」と語った。

「目まぐるしく日常が変わっていく中で、いろいろなものを吸収できているし、やっぱり若いので、それに順応しようしていろいろなものを取り込んでる最中で、もちろんその中で壁にぶつかっているとは思うんですよね。

全然違うサッカーだし、スピードも強度も(セリエAとは)変わってくるし、大変だなと感じているとは思うんですけど、やっぱりこの壁を乗り越えていく面白さを毎日感じてるんじゃないかな。とても素晴らしいことだと思います」

 冨安自身もアーセナルという、これまでとは全く違う環境に身を置くことで新たな感覚を得つつある。「毎試合プレッシャーがある中でプレーさせてもらっていますし、ワンアクション、ワンプレーに対するリアクションが、やっぱりプレミアリーグのサポーターはわかりやすい」と感じる中で、アーセナルの選手としてのプレーの基準を学んでいる最中だ。

「いいプレーをしたらスタジアムも沸くし、逆にミスや後ろ向きなプレー、ネガティブなプレーをすると、その分よくない反応がスタジアムで起こる。ワンプレー、ワンプレーを大事にこだわりながらやる必要があるので、厳しい環境の中でやれているのはいいことかなと思います」

 ボローニャ時代とは「クラブの規模も注目度も明らかに違う」新天地で、これまでとレベルの違う重いプレッシャーとも戦いながら、冨安はアーセナルでの経験と成長を日本代表にも還元していくつもりだ。

「毎試合、世界的に有名な選手と対峙するわけですし、スタジアムの雰囲気や注目度だったりは(セリエAと比べて)プレミアリーグでやっている時の方が感じます。もちろんどの選手にとっても所属クラブあっての代表なので、所属クラブで結果を出さない限り代表には来られないですし、僕で言えばアーセナルでやっていることがそのまま(日本代表でも)出ると思います。そういう意味では、(アーセナルのような)厳しい環境でやれていることはとてもプラスに働いているとは思います」

 ミケル・アルテタ監督の信頼をつかんでプレミアリーグで実戦経験を積む冨安は、世界最高峰のリーグで世界最高峰の選手たちから学びを得て、成長を加速させている。ポテンシャルは青天井。どこまでスケールの大きい選手になるか想像もつかない。

 ただ、吉田は「一番難しいのは、やっぱり(試合に)出続けること」継続の重要性を強調する。たった1試合、パフォーマンスを落とすだけで次の瞬間には居場所がなくなっているかもしれない。

 世界最高峰のクオリティが求められる環境では、競争の激しさも世界トップクラスなのである。それは吉田が身をもって感じてきたことでもある。日本代表でコンビを組むプレミアリーグの先輩は「これ(アーセナルでの先発起用)が1シーズン続いたら本当にすごいなと、もちろん思っていますけど、シーズンが終わってからは終わってからで、また次の壁が出てくる」と語る。

 しかし、心配よりも期待の方が大きいのは間違いない。イングランドで躍動する冨安は驚異的なスピードでどんどん頼もしくなってきている。

「今はとにかく目の前のことを全力でやって、1つひとつの壁を、2段跳びくらいでいってほしいなと思っています。アーセナルに行ったからではないですけど、日本代表では20試合くらい一緒にやっていて、試合の中で日に日に自信が増してるなと感じいます。

僕が(冨安に)任せる部分も多くなっているし、要求するものも高くなっているし、向こうからの要求も高くなっているし、非常にいい状況なのかなと思います。だから今後は相手チームに2人(吉田と冨安)がいるから崩すのは難しいと思われるような形を作れればと思います」(吉田)

 吉田も冨安に全幅の信頼を置き、2人のコンビはカタールワールドカップ出場を目指す日本代表になくてはならないものになっている。日本時間17日1時キックオフ予定のオマーン代表戦でも無失点完封への貢献が期待される。

 9月にオマーン代表に敗れた試合では、アーセナル移籍を控えた冨安が欠場していた。「厳しい環境、毎試合プレッシャーがある中でやらせてもらっているので、普段アーセナルで学んでいることを日本代表に還元できる部分というのはあると思います」と語る23歳はディフェンスラインに前回対戦時以上の堅牢さをもたらすはずだ。

 カタールワールドカップ出場に向けて絶対に落とせないオマーン代表戦は『DAZN』で生配信される。

「勝ち点3が必要になってくる試合ですし、実際オマーンには1試合負けているので、自然と高いモチベーションで臨むことができると思います」(冨安)

 日本では深夜1時に始まる大一番に向けて「何事も準備のところから始まっていると思うので、できる限りのことをやって、試合の時は思い切ってプレーできるような状況を作って、勝ち点3を目指して頑張りたい」と意気込んだ冨安の活躍に注目だ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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