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田中碧は日本代表でまだ全力を出し切れていない…!? 底知れないポテンシャル「100点を求め過ぎても…」【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Getty Images

田中碧
【写真:Getty Images】



 日本代表は12日、カタールワールドカップのアジア最終予選でオーストラリア代表に2-1の勝利を収めた。

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 試合の流れを大きく引き寄せる先制点を決めたのは、先発メンバーに抜てきされたMF田中碧だった。海外組も含めたA代表では初めてプレーした23歳は、ゴールだけでなく卓越したゲームメイクでも存在感を発揮。ヘトヘトになるまで走り抜いた。

 しかし、どうやら彼にとっては自分の持っている力を100%発揮し切れたわけではなさそうなのである。試合後のインタビューでは「そんなに手応えがないというか、もっともっと自分・田中碧がいるメリットを存分に出していかないといけないなあと思いながらやっていました」と語る。

 周りの選手のほとんどが初めて一緒にプレーする選手だったのだから無理もない。東京五輪でコンビを組んだMF遠藤航やDF吉田麻也、川崎フロンターレ時代に共闘したMF守田英正を除けば“はじめまして”に近い状態でピッチに立っていた。

 ゆえに限られた練習とコミュニケーションだけでプレーの感覚を合わせるのが難しかった。絶え間なく味方に立ち位置やパスコースを指示し、細かくポジションを取り直し続けるなど、先輩たちにも物怖じしないハートの強さは見せていたのだが……。田中は語る。

「パス1つを取っても、受け手と出し手の問題があるので。わかりやすく立ち位置をとってあげることが一番大事だと思いますし、慣れてくればより際どいところに立ってもボールの出し入れができますけど、やっぱり初めての選手とやるときはよりハッキリした位置を心がけて、なるべくリスクを取らないように心がけていました。そういうのを少しずつ、90分を通してやっていくことで信頼関係は築けると思うし、あとはしゃべることが一番大事だと思うので、そこを心がけながら90分をやっていましたね」

 チームメイトがどんな動きをするのか把握できていなければ、自分の立ち位置も定まらない。そのため、あえてわかりやすい立ち位置をとって、周りに自分の意思を明確に伝えることを心がけた。プレーの意図やポジショニングの意味を感覚レベルで他の選手たちと共有できるようになれば、もっと「田中碧」の色が出てくるだろう。日本代表ではまだまだ100%の「田中碧」は見せられていない。

「ミスも何回かありましたし、ゲームに対する強度をもっともっとトップレベルに上げていかなければいけないと感じた反面、初めて一緒にやる選手も多くて練習をなかなかできていない中でのゲームで100点を求め過ぎても自分に対してストレスを感じるなと思いながらやっていたので、ある程度(ミスを)許容してやっていました。

もっともっとボールを握りたいというのが本音ですし、もっともっと守備もしっかりハメたいと。そこをしっかりと反省して、チームとしてはもちろん、個人としても成長していけると思うので。もっともっと中盤を制圧していかないといけないと思っているし、できるとも思っているので、まだまだ足りないなあとすごく感じています」

 あれだけの存在感を発揮しながら、「もっとできる」という感覚があるから田中のポテンシャルが恐ろしい。「簡単な試合は何ひとつないですし、ワールドカップはもっともっと厳しい舞台だと思っているので、僕自身ももっともっと成長して、(日本代表を)引っ張っていく立場にいくくらいに力をつけていかないといけない」とは語るが、彼がチームの中心を担うようになれば日本代表のサッカーそのものが大きく成長するのではないか。

「サッカーは相手ありきなので、自分もそうですし、いろいろな選手がどこに立つかでボールの回り方は変わっていく。そこにはメンタルも非常に大事ですし、(ポジショニングによってパスを)つけられるのかつけられないのかが変わってくる。相手のプレスも変わってきますし、もっと怖がらずに、みんながもっといい位置に立てば勝手にボールというのは回りますし、前進は楽にできる。

正直、僕自身の立ち位置(ポジショニング)にも満足できないですし、もっともっといいところに立ってボールを前進できればいいですけど、ただ、すぐ集まってきた代表チームでそういうのは簡単ではないですし、時には(相手に)囲まれていても(自力で)剥がしていかないといけないシーンもある。そういう個人の力もつけていかないといけないのかなと思います」

 田中の眼に見えているものは、他の多くの選手たちとは少々異なっている。同じ感覚をチーム全体が共有できれば、ピッチ上で見える景色も、サッカーに対する考え方も根本から変わってくるはずだ。彼の才能には、日本代表がさらに強くなるための可能性すらも詰まっている。貪欲な「もっともっと」が尽きることはない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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