【写真提供:JFA】
現地7日にカタールワールドカップのアジア最終予選が行われ、日本代表はサウジアラビア代表に0-1で敗れた。
【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
71分の失点場面では、MF柴崎岳からのバックパスがずれて相手選手にボールを奪われ、そのままゴールネットを揺らされてしまった。1つのミスが命取りに。厳しい現実を突きつけられた日本代表はアジア最終予選開幕から3試合で1勝2敗となり、7大会連続のワールドカップ出場に黄色信号が灯った。
キャプテンのDF吉田麻也は、サウジアラビア戦の失点がボールの「失い方」の悪さが積み重なった末のものだったと指摘する。
「あのシーンだけじゃないですけど、ちょっとボールが横や後ろに流れたときのミスが多かったなと。で、失い方のところで、やっぱり前にチャレンジしたボールで失うのと、それ以外の横パスだったり後ろへのボールがミスになるのとでは、ピンチを招く確率は全然違いますし、あの(失点)シーンだけじゃなく失い方が非常によくなかったなというのが、後半は特に感じました。前半はうまくできていたなと思うんですけど」
日本の攻撃はやや単調で、相手にボールの奪いどころを作られやすい展開になっていた。なかなか効果的に前線へボールを運べず、縦パスを入れればカットされ、簡単に反撃を許す展開になってしまっていた。
ミスはミスだが、そのプレーだけが悪かったのではなく、試合全体の文脈のなかに原因がある。吉田は「小さなところでのミスが、徐々に徐々に流れを後半に持っていかれた要因でもあると思うし、それで疲労が蓄積したのもあると思います」と語る。ごくわずかなほころびを修正できず、それはいつの間にか深手となり、大きなミスからの失点になって自分たちに跳ね返ってきてしまった。
タッチライン際から日本代表を指揮していた森保一監督は「映像で全て振り返ったわけではない」と前置きしつつ、「ピッチ上にいてプレーを見ていたところでは、お互いの意思疎通が合わずボールを下げてしまい、そこでパスがズレたことによって相手にミスを突かれてしまった」と失点シーンを振り返った。
敵陣内でボールを受けたMF原口元気が相手のプレッシャーを受けて雑な横パスを出し、それが受け手になった柴崎のプレーの意図と噛み合わずにズレてしまった。慌てて修正しようとした柴崎も後ろ向きのプレーになり、バックパスを選択。吉田のところにパスが到達する頃にはズレがさらに大きくなり、相手FWにボールを奪われてしまった。
柴崎の隣でボランチに入っていたMF遠藤航も「立ち位置はそんなに悪かったと思わないですけど、後ろからボールを受けるタイミングだったり、ちょっとしたところで(出し手と受け手だけの)2人の関係性で完結してしまった」と、試合を通じてチーム全体の意思統一を図れなかったことを悔やんだ。消極的なバックパスを選択せざるを得ない状況が、時間とともに増えていっていたのは確かだ。
センターバックに入っていた吉田は「後ろから見ていて、攻撃に怖さが足りないのは感じていましたけど、それはFWのせいだけではない。改善点としては、もうちょっとボール保持して、相手を走らせて、相手のオーガナイズが崩れるタイミングを見定めるのも大事だし、遅攻・速攻をうまく使い分けたかった」と分析する。ボール支配率で下回り、攻撃に出る回数が少なく、なおかつ単調なリズムで…というのは、サウジアラビアにとって思う壺だった。
失点場面に関してミスをした原口や柴崎だけを責めるべきではない。チーム全体で改善すべき点が数多くある。状況に応じて緩急をつけた攻撃や、味方の立ち位置を把握しながらの連動などが必要だ。そして、敗戦に直結するミスで落ち込む柴崎らを再び奮い立たせ、全員で同じ方向を見て進んでいかなければならない。
「(柴崎には)『まだ盛り返せるぞ』という話はしました。僕もしょっちゅうミスをしていた選手だったので、気持ちは非常にわかるし、本人も非常に責任を感じていると思いますけど、大事なのはやっぱり、このミスからどう立ち直るかだと思うんですよね。
サッカーはミスの起こるスポーツなので、この(残りの)7試合で、岳自身が個人としてチームにもう一度貢献できるかどうかと、チームとして踏ん張って巻き返せるかどうかというのは、非常に試されているところだと思います。個としても、チームとしても両方、僕自身が引っ張っていけるようにしたいなと思います」
吉田はキャプテンとして柴崎を励まし、さらなる奮起を促した。これ以上の「ミス」は命取りだ。オーストラリア代表やサウジアラビア代表は3連勝しており、一方の日本代表は1勝2敗。残りの7試合では1つの負けも許されない状況になった。
12日のオーストラリア代表戦まで残された時間は少ない。柴崎は立ち直り、再び日本代表に貢献できるだろうか。逆転でのワールドカップ出場権獲得に向けて、改善点の共有と意思統一、そしてチーム全員のリバウンドメンタリティが試される。
(取材・文:舩木渉)
【了】