【写真提供:JFA】
日本代表は、7日に行われたカタールワールドカップ・アジア最終予選の中国代表戦に1-0で勝利した。
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前半は5バックで守りを固める中国に対し、日本は主導権を握って試合を進めていく。ハーフタイムまでに10本以上のシュートを放ち、40分にはFW大迫勇也が先制ゴールを奪った。しかし、後半はやや停滞気味の展開になった。
攻撃にかける人数も減り、ボールを動かすテンポも遅くなった。そして、中国が選手交代などを使いながら4バックにシフトし、ブラジル出身の帰化選手3人を前線に配置して圧力を強めてくると、チャンスを作られる場面も増えた。
日本代表を率いる森保一監督は「最終予選で簡単に追加点を取れる戦いはなかなか、理想ではあっても、現実的には難しいと思います。最後プレッシャーがかかる中、そこを選手たちがしっかり無失点に抑えながら勝ち切ったところをさらに続けていって、自信を持って次の第3戦に戦いを挑んでいければなと思います」と、手応えを口にしていた。
無失点に抑えたことは評価できるとはいえ、主導権を握った試合で、長い戦いにおける得失点差のとも考えると1点どまりというのはやや寂しい。後半の停滞感は意図的だったのか、あるいは意図しないものだったのか。
ボランチとして中盤からゲームをコントロールしていたMF柴崎岳は、次のように語る。
「チームをコントロールできたかどうかは個々でいろいろな価値観だったり見方があるので、一概には言えないですけど、個人的に意識していたのは、テンポが早すぎて起こりうるカウンターの応酬というか、そういった展開を避けたかったということ。
自分にボールが入ったところでは、落ち着けるところは落ち着いて展開を戻そうと思っていましたし、ボールを保持する時間を少しでも多く、長くできれば、攻撃を食らうこともない。そこは落ち着いてボールをあまり単純に失わないように心掛ける部分が、後半は特にありました」
ボール支配率は試合を通じて70%前後で推移し、中国のシュートを3本に抑えた。しかし、日本は後半に5本しか放てず。これには主導権を握ってゲームをコントロールする選手のプレー意図が反映されたと言えそうだ。
「個人的にはできるだけ丁寧に攻めていきたかった。例えばトランジション(攻守の切り替え)の部分に、自分たちが数的不利で攻めようとしてもなかなか難しいところがある。そこは横パスを入れて、(もう一度)もらって、またサイドに展開して時間を作ってということもやらなければいけなかったですし、実際そういったシーンも少なからずあったとは思います。
2点目が欲しかったのは事実ですけど、具体的な声かけよりは、自分がボールを持った時のアクションで伝えようと思っていたので、そういった意味では少しドリブルを織り交ぜたり、自分があんまり(パスを)はたかずに、キープして時間を作っていく部分は少し意識した部分かなと思います」(柴崎)
こうした柴崎の考えもあり、「スペース」を積極的に突いていくよりも、「時間」をマネジメントする方向性が強くなったことが後半のシュートの少なさにつながったのかもしれない。
ディフェンスリーダーのDF吉田麻也も、1-0で守り切ろうという意識によってテンポが落ちたわけではないと強調する。
「もちろん追加点を狙いにいっていました。後半が始まる時も最初の10分、もう一度をプレスかけて相手を圧倒したかったですし、追加点で楽になりたかったですけど、そうならなかった。で、少しずつ流れを向こうに持っていかれそうになって、相手もブラジル人の選手を投入して、勢いを持ってきた。
そのなかで後ろは我慢することが大事だなと思っていました。そこが何よりオマーン戦でできなかったことなので、最後まで集中力を切らさず(失点)ゼロで抑えたことは評価できると思うし、もちろん1-0の結果に満足していないですけど、最低限の結果は出せたと思います」
吉田は「特に前半、典型的なアジアの戦いのなか、相手がブロックを敷いて、非常に低い位置で守備固めしてくると、それを崩すのはこのチームだけじゃなくて、前回(のアジア予選)も、ザックジャパンの時もそうですけど、やはり簡単じゃないんですよね」とも語る。
そのうえで引き続き課題になるのが、勝っている状況で意図的にゲームをコントロールしながら、追加点を奪うこと。キャプテンの吉田は「こういう試合で複数得点を取らないと、イレギュラーで失点することもあるだろうし、実際に後半の最後の方は押し込まれる時間もあった。1点目を取るのも非常に大事ですけど、追加点で相手の勢い止めなきゃいけないのが今日の大きな課題」と気を引き締めていた。
主導権を握ってゲームを進めながら、いかにシュートチャンスの数を増やしていくか。中国戦のようにコントロールすることに意識を向けすぎると、リスクを冒してゴールに向かっていく意識が薄れがちになってしまう。
常にゴールを奪うという目標を前提に、チーム全体で意思統一しながら、この相反する両方の意識の最適なバランスを試合の中で臨機応変に見出していくことが日本代表の次なる課題だ。
(取材・文:舩木渉)
【了】