【写真提供:JFA】
日本代表は、7日に行われたカタールワールドカップ・アジア最終予選の中国代表戦に1-0で勝利した。
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2日のオマーン代表戦では低調なパフォーマンスに終始し、0-1で敗戦。最終予選の初戦で勝ち点を落とすという苦しいスタートから、短期間で精神的にもフィジカル的にも立て直して迎えたのが中国戦だった。
「初戦はすごく不甲斐ない試合になりましたし、僕らはもう1回、『最終予選とはどういう試合になるか』『本当に相当な覚悟が必要だ』と全員で話し合って、それが今日の試合に生きたんじゃないかと思います。プレーよりまずは最終予選の厳しさというのを、みんな初戦でわかったと思うので、これからさらに勝ち点を積み上げていきたいなと思います」
中国戦で決勝点を挙げ、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(試合のMVP)として記者会見に臨んだFW大迫勇也は、オマーン戦後に“選手間ミーティング”があったことを明かした。
「移動して時間があったので、その合間に若い選手であったり、経験がある選手であったり、選手間でしっかりと話し合いましたし、前回のワールドカップ最終予選も本当に厳しい戦いだったので、もう1回覚悟が必要ということは全選手に伝わったんじゃないかなと思います」
大迫がオマーン戦から中国戦に至るまでに感じたチームの変化は「試合前の緊張感」だったという。長く日本代表を引っ張ってきたエースストライカーは「そこは僕ら経験がある選手が雰囲気を作ったつもりですし、本当に後がない試合、目を覚まさなければいけない状況だったので、そこは意識しました」と語る。
チーム全体を俯瞰していた森保一監督も「もちろん最終予選は厳しい戦いになることを覚悟して臨みましたが、(オマーン戦の)敗戦を受けて、相手を上回って勝ってこその覚悟だということ、もっと覚悟が必要だという部分で、我々が前進していくというメンタルの部分の違いがあったかなと思います」と選手たちの意識の変化を実感していた。
大迫や森保監督だけがチームの前進を感じ取っていたわけではない。MF柴崎岳も「試合に向けて練れる時間を持てたので、より具体的に練習でこうしていこうという部分を落とし込めた部分もありますし、単純に選手のピリッとした意識が、1戦目(オマーン戦)と2戦目(中国戦)の準備の部分で少し変わった」と話す。
指揮官は「過去の試合に起こったことをポジティブ変換して次の試合に臨めるかということ」の重要性も口にしていた。敗戦に落ち込んだままにならず、オマーン戦を糧として前進していくことができた。
そして「私が言わなくても選手たちは自分たちでミーティングを開き、反発力を持って、いいエネルギーを作り出してくれていました」と、森保監督は選手の自主性を称える。監督主導のミーティングで戦術面や精神面を改善する働きかけとともに、選手たちからの発信も合わせてチーム状態は上向いていった。
今回の2連戦を通して、大迫には経験豊富な選手としての自覚がより強く芽生えている。「もちろんやるべきことは増えていると思っているし、僕がしっかり言うことで、自分にもプレッシャーをかけているつもり。責任感も覚悟も代表の試合は最終予選になればなおさらなので、そこは持ちながら、この活動をしたと思っています」と明かした。
キャプテンのDF吉田麻也も最終予選の経験者として、「1試合目が終わった後に、誰もが不十分だと認識していたと思います。改めて『なぜこの最終予選が大切なのか』ということを再確認しなければいけなかった。本来は1試合前にすべきだったかもしれませんが、僕自身ミスがあったと認めざるをえないです」と、準備面に不足があったことを認める。
だが、リーダーの自覚を持った選手がどんどん増えることで、同じミスを繰り返す確率は劇的に下がっていくだろう。吉田だけが“キャプテン”でなくてもいいのだ。
「ミーティングは節々にやっているので、今回だけじゃない。要所要所でチーム全体に話すことは意識していますし、個別に話すことも意識しています。今回も全体で話しましたし、カタールに着いて、初日の練習から明らかに違っていたなと。全員が毎回そういう気持ちで挑まないといけないし、僕自身もそうですけど、代表キャリアは非常に短くて、一瞬一瞬を大切に過ごさないといけないし、プレーしないといけないと思います」(吉田)
柴崎はすでにサウジアラビア代表やオーストラリア代表との戦いが控える10月シリーズに向けて「この予選のターニングポイントになる」と語った。彼も経験あるプレーヤーとしての覚悟をより強くしている1人だ。
「先ほどチームとしても10月は本当に大事なものになると話していたので、それを個々人が非常に重く受け止めて、準備しなければいけない。まずは中国戦の準備をスタンダードにしなければいけないですし、より良くしなければいけないと思うので、この勝利に浮かれず、まだまだ自分たちは厳しい立ち位置にいるんだということを自覚して、10月を全員で迎えたいと思います」(柴崎)
アジア最終予選を2試合終えた段階で、日本は4位につけている。このままではカタールワールドカップ本大会の出場権は得られない。10月に上位のサウジアラビアとオーストラリアを打ち破ることが、巻き返しには不可欠だ。9月シリーズでより強い覚悟を持った日本代表選手たちのさらなる奮起に期待したい。
(取材・文:舩木渉)
【了】