【写真:Getty Images】
日本代表は、7日に行われたカタールワールドカップ・アジア最終予選の中国代表戦に1-0で勝利した。
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2日のオマーン代表戦に敗れて迎えた背水の陣。序盤から中国相手に主導権を握って試合を進めた日本は、40分にFW大迫勇也のゴールで先制する。そして、最終的にこの1点が決勝点となって勝ち点3をもぎ取った。
あらゆる面で低調だったオマーン戦に比べ、中国戦での選手たちの動きは明らかに向上していた。それでも後半になると中国に攻撃チャンスを与える時間帯もあり、決して楽な展開ではなかった。
中国は終盤にかけてブラジルからの帰化選手などを次々に投入し、システムも5バックから4バックにシフトして攻勢を強めてくる。一方、日本は最低限の交代で大きくチームのバランスに手を加えず戦っていた。
結果的に交代枠は「2つ」余ったまま試合終了。オマーン戦も同様に2人分の交代を使わなかったが、当時は中国戦と全く違う展開だった。最終盤に追いかける側になっても、ベンチには起用可能な攻撃的な選手が残っていなかった。
では、1点リードの展開でベンチに豊富な選択肢を残していた中国戦で、森保一監督が交代枠を余らせたままだったのはなぜなのだろうか。
「人が変われば戦術も立ち位置も多少変わるので、怪我もあり、戦術的にも変えていくという部分で、試合の終盤に向けてよりパワーを落とさずに戦おうということで選手交代をしました」
試合後のオンライン取材の中で、森保監督は自らの采配の根底にあった考え方を説明した。
最初の交代カードはアクシデントで切らざるを得なかった。後半開始直後の50分、左足を痛めた様子のFW古橋亨梧をMF原口元気と交代させたのは、「代えるタイミングを考えていた時に残念ながら怪我をしてしまっての交代」だったという。
その後は、すでにイエローカードを1枚もらっていたMF伊東純也を76分に下げ、MF鎌田大地を投入。最終盤の88分には足を痛めた様子のDF長友佑都に代えてDF佐々木翔を送り出した。森保監督は、「最後に勝ち切るためにチームとしてパワーを上げていこうということで、あの交代カードを切りました」と述べた。
ベンチにはMF堂安律やFWオナイウ阿道、さらにMF守田英正といった選手が残っていた。それでも、ハーフタイムを除き3回与えられた交代の機会を使って1人ずつ投入していった判断には、チーム全体のバランスを簡単に崩したくないという考え方があったのかもしれない。
森保監督は試合後の記者会見の中で、攻撃陣のスターティングメンバーの構成について「大迫(勇也)を軸として、起点とした時に」という基準にも言及していた。ピッチに残っているFW大迫勇也を前線の核に、連係・連動するユニットの構成を動かしたくなかったのかもしれない。
最終予選の初戦を落としてしまい、2戦目の中国戦でより確実に勝利をつかむにはどう動くべきか。後半の早い段階で負傷者が出るアクシデントもあったうえ、なかなか追加点を決められず1-0のまま終盤に突入して、ベンチがどう動くか。非常に難しい判断が求められる状況で、森保監督は動かないことを選んだ。
結果的に9月シリーズではGK2人のほか、DF昌子源、DF中山雄太、DF山根視来、そして守田やオナイウと1分も出場しなかった選手が多く出ることとなった。だが、ぎりぎりの勝負の中で常に勝利という結果を求められるアジア最終予選で、これまでのアジア2次予選や国際親善試合とは全く違う判断基準になるのは自然なこと。
今回は出番のなかった選手たちが奮起し、アジア最終予選の大きな山場となるサウジアラビア代表戦とオーストラリア代表戦が控えた10月シリーズに向けて指揮官の頭をさらに悩まさせる存在になることを期待したい。
(取材・文:舩木渉)
【了】