【写真:Getty Images】
オマーン代表は2日、カタールワールドカップのアジア最終予選で日本代表に1-0の勝利を収めた。
【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
日本の攻撃を組織でしっかり押さえ込み、主導権を握らせず。一方で攻撃では日本よりも多くのシュートを放ち、より多くのチャンスを作って終盤に速攻からゴールを奪った。明らかにオマーンの方が内容面でも充実した試合になった。
オマーン代表を率いるブランコ・イバンコビッチ監督は「私たちにとっては本当に歴史的な勝利。選手たちがこのビッグゲームで勝利することができたのは、まさにピッチ上に全ての心を込めて、そして誠心誠意を尽くして戦った結果だと思っている」と喜びを噛み締めていた。
入念な準備が実った。オマーンでは新型コロナウイルスなどの影響により国内リーグの開幕が10月にずれ込んだため、イバンコビッチ監督は代表選手を集めて8月上旬からセルビアで合宿を実施。地元のプロクラブなどと練習試合も行い、4戦全勝で日本に乗り込んできた。
コンディションも組織戦術の練度も飛躍的に成長し、自信は深まっていた。
「いい準備をすることができた。私たちの準備における目標は、このグループでサプライズを起こすことだった。選手にも『今日の試合で失うものは何もない。何があったとしても得るものしかない』と伝えた。『初戦なのでパフォーマンスが完璧でないとしても、情熱を持ってプレーしよう。そして日本を驚かせよう』とも伝えていた」
イバンコビッチ監督の思いに、選手たちは結果で応えて見せた。中盤がダイヤモンド型の4-3-1-2で粘り強く守り、ボールを奪えば前線に残した2トップを目指して勇敢にパスをつないでいった。
「どうやって戦術的に驚かせたかというと、ハイプレスだ。ハイプレスをすることによって、日本が最近経験してきた3、4試合とは違う内容の試合をしたと思う。自由に動いたし、こうしたハイプレスのスタイルには、日本の何人かの選手はびっくりしたと思う」
6月までのアジア2次予選でも採用してきたシステムを継続しつつ、対日本を意識したアレンジを加えて徹底的に弱点を狙ったという。イバンコビッチ監督は、綿密なスカウティングにより日本のスキを見抜いていた。
「どのチームにも弱点はある。たとえば日本はスモールサイドでのプレーが多いということ。それから攻守の切り替えの時にチャンスが生まれることがわかったので、私たちは引いて守るだけではなく、攻撃のチャンスがあったら、たとえばアタキングサードでの攻撃のチャンスがきたら積極的に生かしていこうと思っていた」
90分間コンパクトな陣形を保ってプレーし続けることも意識したうえで、狙い通りに敵陣内での攻撃チャンスを生かして決勝点もゲット。「日本は私たちのプレースタイルに対して、最終的には解決策を見つけられなかったと思う」とイバンコビッチ監督は誇った。
唯一、誤算だったのは試合前から大雨が降っていたことだ。オマーン代表の選手たちのほとんどは雨の中でのプレーに慣れておらず、ウォーミングアップ中にもぎこちなさが垣間見えた。
やはりオマーン代表にとって「雨は大問題だった」が、イバンコビッチ監督曰く「雨に合わせた形で戦術を微調整」することで対応。「私たちはパスを回すスタイルなので、その基本は守った」中で、GKからのビルドアップなどでリスクを冒さず、ロングボールを多用する形に切り替えて乗り切った。
「オマーン代表選手と一緒に監督の仕事をするのは大変楽しい経験だ。みんなで言っているのは、『何かを成し遂げよう』ということ。本当に歴史的な勝利だ。オマーンが初めて公式戦で日本に勝ったというプレゼントを、今日受け取ることができた」(イバンコビッチ監督)
「私たちのチーム、それからコーチ陣、それからスタッフ陣、全員に対して祝いたい。非常によい結果を生むことができた。これは私たちが本当に一丸となって一生懸命ハードワークをした結果だ。この勝ち点3は非常に大きな意味を持っていると思う。本当に喜んでいる」(決勝点を挙げたイサム・アブダラ)
試合開始から終盤まで一糸乱れぬ組織力を維持し、想定外のアクシデントにも対応する柔軟性も見せて日本代表を倒した。指揮官は「人生の中で夢があるとしたら、やはりこういう素晴らしいパフォーマンスを見せて、オマーン国民に誇りに思ってもらいたかった」と勝利を大いに喜んでいる。
戦術的にも精神的にも準備の成果を遺憾なく発揮したオマーン代表の完勝と言って差し支えない、歴史的な勝利だった。
(取材・文:舩木渉)
【了】