前回までのあらすじ
パラグアイのクラブ「リベルタ」に所属する日本人サッカー選手「群青叶(ぐんじょう・かなえ)」は、南米大陸二大カップ戦のひとつ、コパ・スダメリカーナ遠征に参加。コロンビア西岸の都市カリにてベスト8進出をかけた決勝ラウンドに臨んだ。この試合でPKを外し、サッカー賭博に大番狂わせの結果を招いた群青は、大量の資金流出を余儀なくされた麻薬密売組織の怒りを買い拉致されるが、東京のプロサッカークラブ「銀星倶楽部」常務、松重崇(まつしげ・たかし)によって救い出され、帰国する。
「銀星倶楽部」オーナー上水流領(かみずる・かなめ)の死後、群青は同クラブの社長に就任。経営危機に揺れるクラブの再建に乗り出した。
しかしカジミエシュ・チェシュラック監督の更迭とライバルであるインテルクルービによる彼の「強奪」、銀星倶楽部の女子部にあたるGEKKOコンピュータシステムサッカー部の解散とそれを批難するキャプテン栢本里昴(かやもと・りよん)の出現、インテルクルービへのスタジアムの優先使用権譲渡など、いくつもの予期せぬ出来事にさらされ、新米社長の群青はうろたえるばかり。リーグの会合ではインテルクルービのオーナー神足一歩(こうたり・かずほ)の正論に圧倒され、非力さを痛感する。
問題解決を迫られる群青は、三軒茶屋で地元の愚連隊を取り仕切る男にしてスーパーマーケットチェーンの経営者、山田(やまだ)とミダイの協力により、女子部全員の就職先と新たなホームスタジアムの確保に成功する。そのミダイが過去にけがを負わせたことを里昴の盟友・蓮田(はすだ)チカに謝罪すべく訪れた練習場で、チカと外国人の少女タチアナがとっくみあいの喧嘩を始めてしまう。インテルクルービとまちがえて銀星倶楽部の練習にやってきたタチアナとともにサッカーをしようという里昴の配慮が招いた事態を、群青はからだを張り収拾する。
タチアナたちを迎えに訪れたインテルクルービの専務であり腹違いの姉である上水流奏(かみずる・かなで)から、銀星倶楽部強化部長の柳川(やながわ)が選手の移籍に際して不当に利益を得ていたことを知らされた群青は、ふたりで成田空港へ。出国寸前の柳川を捕まえることに成功するが、その代償に選手獲得ルートを失ってしまった。
貧弱な戦力を新任の監督老松尚之(おいまつ・なおゆき)はまとめきれず、新シーズンの開幕戦を落とし、不穏な空気が漂い始める。
トップチームに緊張が走る一方、女子部は消滅しかけていたもう一チームとの合体により存続、融合がうまくいっているかに見えた。しかし差別を含む人間関係の悪化で里昴が山田の店を退職すると、本人は落ち込み周囲にも動揺が走る。この非常時に群青は女子部の副キャプテン琴川桜花(ことがわ・おうか)と示し合わせ、里昴の気持ちを落ち着かせることに成功する。そして新しい職場として銀星倶楽部事務所アルバイトの口を提供すると、ようやく里昴に笑顔が戻った。
だが、苦難を経てより結束を強めた女子部と対照的に、トップチームは完全に崩壊。一引き分けを挟む一一連敗を喫し、群青は老松を更迭した。
コネクションがない状態で新監督探しに乗り出した群青は、都リーグの会場で社会人チームの指揮を執るひとりのユニークな男を発見する。試合後に本人から名前を聞き出して調べると、四年前に暴力事件を起こしてサッカー界から離れていた元プロ監督、木瀬正親(きせ・まさちか)であることがわかった。
監督就任を要請する群青に対し、木瀬は「どれだけ負けても解任するな」と要求する。それは責任逃れと失職対策ではなく、クラブの価値観を築くうえで必要なことだった。群青は木瀬を守りぬく覚悟を固め、新監督に据えることを決めた。
木瀬の許で再出発を図った銀星倶楽部トップチーム。内容は向上するが、それがすぐ結果に反映されるわけではない。今シーズンの銀星倶楽部が必勝祈願をしていないと知ると、山田はそれも弱体化の一因だという。オカルト論ではなく、日常の一つひとつを研ぎ澄ませている者が強いのだと。それは平均的な戦力でビッグクラブに対抗している鹿島N.W.Oにも言えることだった。彼らと銀星倶楽部とでは何から何までちがいすぎる。求められていないのなら存在する必要がないのではと悩む群青を、里昴はホームゲームごとに通うおばあさんを例に挙げ、ごくわずかなファンを満足させられないのなら先はない、インテルクルービに負けるな――と励ます。
しかし現実に連敗は止まらず、ますます窮地に追い込まれていく。切羽詰まった状況で、木瀬は群青に対し、現役復帰を要請した。
群青はひとまず練習に参加してチームの役に立とうとはするが、選手登録の決断は先延ばしにした。
迎えた週末のインテルクルービとのダービーマッチは、現在は相手のホームとなった湾岸スタジアムを借りてのホームゲーム。練習の成果が反映されることを期待してスタンドで観戦する群青だったが、対策を施されての〇―三の完敗という結果を受け、怒りに荒れくるうゴール裏のウルトラを鎮めるため、走り回るはめになる。チームバスを脱出させた群青が得たものは軽いけが、そうして少なくないファンを失ったという事実だった。
松重と監査役からは会社を整理する方向で検討に入ると伝えられ、銀星倶楽部は今シーズンかぎりで消えることが濃厚になる。そこへタイミングよく、インテルクルービのオーナー神足一歩から、関係企業を通した資金援助の提案を持ちかけられる。しかしそれは銀星倶楽部を乗っ取ろうという神足の策略である疑いが濃くなり、群青は里昴とともに使者の奏を説得。断りの返事を持ち帰らせる。
すると翌日、奏がインテルクルービ社内の陰謀によって解任同然の事態に追い込まれた。激しく動揺する奏を群青は優しく慰める。
会社の行方が定まってきたことから出向の身分だった松重はリーグ事務局に復帰。常務の座が空位になる。
そしてさらに数日後、会社存続の鍵を握るクラブライセンス継続に向けた逆転の機会であるフットボールリーグの会議に銀星倶楽部常務として姿をあらわしたのは奏だった。群青はインテルクルービの専務となった松重と短く火花を散らす。
事前の工作も功を奏し、銀星倶楽部のライセンスを剥奪するか否かについての議論は五分となり、裁定は元鹿島N.W.O.最高顧問の賢老、田頭重國(たがみ・しげくに)に委ねられる。神栖に住む田頭は自らの許を訪れた群青に対し、この国と世界の成り立ちとフットボールのとの関係を説き、それを大きく変えかねない神足への懸念を表明。銀星倶楽部の延命に協力するかわり、インテルクルービの優勝を阻むよう求める。
今後への足がかりを掴んだ群青に、近隣で待機していた奏から急な報せが入る。体調が悪化し、自ら救急車を呼んだのだ。慢性骨髄性白血病と診断された奏は薬物投与で治療する方針を採るが、数日間、神栖の病院に足止めされることになる。
後ろ髪を引かれる思いで帰京した群青は木瀬と戦力補強と戦術変更についての打ち合わせをおこない、センターバックの補強を決める。ルートを持たない群青に一本の電話が。それはジュニアユース時代によく面倒をみてくれたアマチュア選手、山鹿(やまが)からのものだった。
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