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またも準決勝の壁を越えられず。日本に何が足りなかったのか、オーバーエイジが導き出した答えは…【東京五輪男子サッカー】

text by 編集部 photo by Getty Images

吉田麻也
【写真:Getty Images】



 準決勝の壁は厚く、高かった。

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 U-24日本代表は3日、東京五輪の準決勝でU-24スペイン代表と対戦した。115分に途中出場のFWマルコ・アセンシオにゴールを破られ、延長戦までもつれた激闘は0-1で終戦。スペインが決勝に駒を進めた。

 初の決勝進出を目指した日本は、またも準決勝の壁を越えることができなかった。

「相手にボール保持はされましたけど、しっかりそこの研究はしていたので、うまく相手にサイドでも数的優位を作らせないように戦って、相手にボールを入れさせないように戦って、115分近く我慢し続けたんですけど、ワンチャンス、最後のところで(相手の)クオリティが出たなと思います」(吉田)

 キャプテンの吉田麻也は、言葉を絞り出すようにして試合を振り返った。2012年のロンドン五輪でも準決勝のメキシコ戦に敗れ、金メダルには手が届かなかった。オーバーエイジ選手として当時の経験を若手に伝えつつ、歴史を塗り替えて頂点に立つことが目標だった。

 しかし、またしても準決勝の壁を越えることはできなかった。

「(酒井)宏樹とも残り5分、10分くらい、ベルギー戦みたいなカウンターはないぞという話はしていたんですけど。まあ、やっぱり個で剥がされてしまったなというのはありますね。ただ、そこで剥がされてもカバーをし続けていくのを徹底していたんですけど、最後のワンプレーだけ、個の差が……」(吉田)

 吉田の口から自然と出てきたのは、2018年のロシアワールドカップで日本が敗れたラウンド16のベルギー代表戦のこと。同点で終盤に差し掛かりながら、ベルギーの高速カウンターに屈した試合だ。その失点までの流れは“ロストフの14秒”と呼ばれるようになり、日本代表選手たちにとって大きな教訓、そして未来への指針にもなっている。

 同じオーバーエイジ選手であり、吉田とともにロシアでのベルギー戦を経験している酒井宏樹は「何回も『いい試合をした』と言われるのは、本当に疲れたので、それを晴らすためにも今日は勝ちたかった」と悔やむ。

「これだけのチャンス、僕らの実力だったり成長だったりを示せるチャンスというのはなかったので、非常に悔しいですね」(酒井)

 前回のロンドン五輪でメキシコに敗れた時ほど、「世界との差」はないのかもしれない。だが、今回のスペイン戦で味わった悔しさを、ロシアワールドカップのベルギー戦で見せつけられたような「個の差」と結論づけていいのだろうか。

 だが、「(答えを見つけるのは)難しいですね。まあ、わかればそんなに簡単なものはないですし、ただ本当に最後の一歩だったり、1つの勇気だったり、そういうところだと思うんですよね。いや……悔しいですね」と酒井の頭の中でもいまだに結論は出せていない。

 それでも吉田は「これから若い選手たちが上のヨーロッパの舞台でやるにあたって、やっぱりあそこの差が勝敗を分ける。あそこ(延長後半の失点)を止められるかどうかで、もしくはワンチャンスをものにできるかどうかで生き残っていく世界に身を置いていくと思うので、これからたくさんのことを学べるんじゃないかと思います」と前向きだった。

 すぐに「壁」を越えるための方策を見出せずとも、五輪では準決勝の後にすぐ次の試合がある。3位決定戦に勝って銅メダルを獲得できなければ、日本サッカーが成長していると胸を張れなくなってしまうかもしれない。

 中2日で迎えるU-24メキシコ代表との再戦に向けて、ロンドン五輪で準決勝の後にさらなる悔しさを味わった経験を持つ吉田と酒井の存在は、これまで以上に重要となっていくだろう。

「ロンドン五輪の時は、ここ(準決勝)でメキシコに負けて、燃え尽きてしまった感があった。そうじゃなくて、やっぱりメダリストになりたいです。そこはみんなそうだと思うし、育成年代で、このメンバーでやれるのは最後の試合になると思います。ここが終われば、上にのし上がっていく選手もいれば、結果が出なくて燻ってしまう選手も出てきます、正直ね。

それがプロだと思うし、できればみんなと、また同じ上の舞台で戦いたいですけど、そんなに甘い世界じゃないので。この世代、本当にいいチームだと思うので、何としても最後、勝たせて終わらせてあげたいなと思います」(吉田)

 酒井も「金メダルを獲れなかったら最低でも銅メダルという、そういう気持ちに切り替えたいですし、銅メダルを獲れればいいやではなく、最低でも銅メダルという強い気持ちでいきたい」と、すでに前を向いていた。

「まだ倒れるわけにはいかないなと思っています。次勝って、メダリストで終わりたいです」(吉田)

 キャプテンは試合後のピッチで、チームメイトたちに次の試合の重要性とメダル獲得への熱い想いを語ったという。取材陣にも「オリンピックだけでなく、ワールドカップもそうですけど、いい試合をしたあと、美化されて終わるのではなくて、結果を出して終わりたいです。そこに尽きます」と宣言した。立ち上がるための力は、まだ残されている。

 勝って五輪を終えられるのは金メダリストと銅メダリストだけだ。勝利して53年ぶりの銅メダルを手にした時に、スペイン戦で見つからなかった答えのカケラを手にすることができるかもしれない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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